Friday, April 14, 2006

誰でもテロリストになれる時代/an easy way to become a terror suspect.


ひでー世の中になったことは実感してるし、簡単に怪しまれて、テロリストの疑いをかけられることなんてあり得ることだ。わかっていても、実例を突き付けられると、しばし唖然としてしまうことがあります。

英国で20年も30年も前に流行った曲を聞いていただけでテロリスト扱いされた事件が4月5日付けのデイリー・メイル紙に載っています。

事件が起きたのは英国ティースサイドの町。タクシーの運転手から危険人物を乗せたという通報を受けたこの町の警察は、ロンドンへ向かう飛行機を止め、乗客のひとりをテロ容疑者として逮捕、抱え降ろし、取り調べをしたのだそうです。


この乗客、ハラージュ・マンさん、空港へ向かうタクシーのなかで何をしでかしたのかというと、車内にあったシステムに自分のMP3プレイヤーをつなぎ、いろいろ、曲をかけたのだそうです。

『プロコル・ハルムの「青い影」をかけたら、運転手、好きそうだったんで、それじゃあロックの古典がいいかなって、ツェッペリンの「移民の歌」をかけた。それから、ロンドンへ行くところだったからクラッシュの「ロンドン・コーリング」、そして最後にビートルズの「ノーウェアマン」でしめくくったんだ』

まあ、趣味のことなので、他人のことはいろいろ言えたものじゃありませんが、当たり障りのない選曲のような気がしますが、これを聞いた運転手、こいつ怪しいやつだって、空港についてからケーサツにたれ込んだんだそうです。あらあら。

どれも知った曲で、全然、怪しくない。「移民の歌」とか「ロンドン・コーリング」あたりは音源がどこかにあるんじゃないかしら。運ちゃんを警戒させたのもこの2曲なのだそうです。

ロバート・プラントの「あああ?ああ」って叫び声で始まる「移民の歌」は、ゼップには珍しく2分ちょっとの長さ。いまは亡きジョン・ボーナムの祭り太鼓のようなドラムスが特徴の曲で、リリースされた頃、レコードにあわせて歌った曲だから、歌詞も知っています。個人的にはこの曲の入るアルバムより、2枚目のほうがずっと好きでしたけど。

んで、「移民の歌」はこんなふうに始まります。
"The hammer of the gods will drive our ships to new lands, to fight the horde, singing and crying: Valhalla, I am coming!"
神の鉄槌が、我々の舟を新たな大地へと導く。群れと闘い、歌い躍る。万歳!出発進行

「ロンドン・コーリング」はクラッシュが、ただのパンクバンドから脱皮する途上にあることを示した曲だったように記憶しています。歌いやすい曲で、20年以上前に行われたシドニー公演でも、いまは亡きジョー・ストラマーに観客が声をあわせ合唱したものです。

"London calling to the faraway towns, now war is declared and battle come down."
ロンドンから遠くの町々へ連絡。戦争が宣言され、戦闘が始まる

まあ、どちらも、それなりの曲ではありますが、とりたてて破壊的だとも、テロリスト的(どういう意味じゃ?)だとも思われません。同じクラッシュのロンドンものなら「ロンドン・コーリング」じゃなくて「ロンドンズ・バーニング」でしょうし。もっと「過激」でアブナイ曲もたくさん知ってます。モノホンのテロリストが作戦に出かける途上だったとしても、こんなんで気合いを入れるのかしら。

これらの曲をかけた客をテロリストじゃないかって疑いの目で見た運転手もどうかと思いますが、通報を受けたケーサツも、それを真に受けて、飛行機の離陸を止め、乗客を降ろすようなことじゃないって判断ができない。セーフがあれこれ、がなりたてても、テロ対策ってのはこの程度のものなのだ。なんとも情けなくなってしまいます。なんともはや、底の浅い世界になってしまったもので、思想というか、ほとんど趣味のレベルで被疑者にされてしまう。

自分はMP-3も使わないし、タクシーにのって空港に出かけることもほとんどありませんが、自宅で、例えば、パレスチナ人のラップを集めたアルバム、「フリー・ザ・P」なんか、大音量でかけていたら、まあ、近所の人は慣れているんでそういうことはないと思いますが、通りすがりの人とかが怪んでケーサツにたれ込む。んなことがありそうな時代。鉄パイプ爆弾も腹腹時計も火炎瓶も角材も竹ざおも黒ヘルも危険思想のひとかけらもなくても、誰でも簡単にテロ容疑者になれてしまう。なんともお手軽で、便利な時代になったものです。

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