Thursday, April 13, 2006

オイル・ピークと米軍、その2/Oil's well?


世界一の石油消費者である米軍がオイル・ピークに備えた研究を行っていたことが明らかになった。結論は「便利なエネルギー源が安くて、ふんだんに使える時代は早急に幕を降ろそうとしている」。

国防省がオイルピークに関する研究を行っていたことを3月に、米連邦議会で明らかにしたのは共和党のロスコー・バートレット議員。この研究は軍の技術開発研究所(Army Engineers' Research and Development Center)の手で昨年9月にまとめられたもので、「エネルギー見通しと米軍施設への影響」と呼ばれる報告書はオイル・ピークの到来が近いことを警告し、省エネや再生可能なエネルギーへの転換などの対策に軍がいますぐ取り組むことを提唱している。

pdfはArmy Engineers' Research and Development Centerのサイトからダウンロードできる。


レポートの特徴のひとつは、オイルピークの見通しについて、政府機関である地質調査庁(USGS)などの楽観的な予測を退け、ピーク・オイル調査学会(ASPO)などの民間機関の予想を採用していること。また、再生可能なエネルギー源について、それぞれ短所、長所を検討しているが、原子力については「今のような使い捨てな使い方をしていれば、20年もしないうちに安価なウランを使い切ってしまうだろう」と否定的で、それよりも太陽光や風力の可能性のほうを評価している。

それらをはじめとして、この報告書は世界最大級の石油消費者、環境破壊者である軍にしては考えられないほど、「グリーン」だということができる。

いくつか、要点を箇条書きする。
●便利なエネルギー源が安くて、ふんだんに使えた時代は早急に幕を降ろそうとしている。
●2003-2005年にかけての石油価格の倍増は異常なことではなく、これからずっと起こりうることだ。
●我々の生活水準を維持するため、エネルギー消費はかかせず、軍務の達成にも不可欠だ。しかし、現状の使い方をこれからも維持し続けていくことはできない。
●現在、アブラに代わりうる代替エネルギーはない。
●別なエネルギー源へ移行するための技術とインフラの開発にいまから取り組むべきである。...将来のエネルギー需要に対応するための最善のオプションは効率化と再生可能なエネルギーだ。

国防省のような大組織がひとつの報告書のおかげで、変質することはないだろう。しかし、燃料効率などおかまいなしにアブラをばんばん燃やして、世界各地に武力を展開するというこれまでの安全保障の考え方はアブラ減耗の時代に成り立たないことは、誰の目にも明らかなようだ。当然、軍のあり方や役割も変わらなければならない。

しかし、米軍の再編を協議する日本側、オーストラリア側の役人ははたして、それだけの歴史的な認識をしているのかどうか。米軍がピークを理解し、研究しているということを分かっているのかどうか、気にかかる。

ピーク以降の社会について、国際的な議定書が作られ、限られた資源の平等で賢い使い方が促進されるだろうと予想する人もいる反面、アブラ減耗の時代が混乱に陥るという悲観的な見方をする人も多く、残った資源を巡る武力衝突を描く人もいる。

米軍に限らず、どこの国でも軍隊は管理のノウハウと手段を持っており、突然のオイル・ショックがもたらすかもしれない事態にすばやく対処できる数すくない組織であることは事実。ピークのおかげで、もし、市民社会経済や行政が機能不全に陥れば、社会秩序を保てる唯一の組織になるかもしれない。

オイル・ピークは市民社会をそんな形でも脅かす可能性があり、石油減耗時代における軍隊の役割を再定義することも、市民社会が早急に準備しておかなければならないことのひとつだ。

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