Thursday, September 07, 2006

ジャックが救世主?/Jack the Saviour?

ここの地主,高野さんは最新のインサイダーで「メディア全体が“ワイドショー化”しつつあると言えないか」と書いています。

日本ならば秋篠宮夫妻に生まれた赤ん坊や,こちらならエイにさされて死んだクロコダイルハンターが,ここ二、三日、メディアのワイドショー化を象徴しています。さて、猛獣使いや世継ぎの陰に隠れがちですが,アブラ関連でもワイドショー化を裏付けるような報道があります。

「米シェブロン、メキシコ湾深海で原油試掘に成功」(日経5日付け)というやつ。

日経の報道は「試掘に成功」と控えめですが、日本初のオイルピーク専門ブログの「ん!」が指摘するように,ジャックという名前の油井で,試し堀がうまくいったという話題,海外ではかなりなスペースであちこちの媒体で大げさに報道されています。

自分が目にした中で極めつけはグローブ・アンド・メイル紙の「ピーク論者はジャックを知らなかった」というタイトルの記事です。

「象はまだ絶滅していない」という書き出しで,こうしたアブラの発見はこれからも続く,これでオイルピーク論は破綻した,そう宣言しています。

あらまあ,楽観的なこと。

油田の規模が報道されているように30億から150億バレルの規模だとしても、大騒ぎするほどの量ではありません。世界では一日に8千万バレルを越すアブラが消費されています。仮に150億、すべてが採掘可能だとしても、わずか半年分にすぎません。アメリカ一国でも2千万バレル以上を毎日消費しているので,たかだか2年分です。

その量も量ですが,問題はこの油井がニューオーリンズから400キロ以上も離れた沖合で、しかも海底6千メートル以上の深度であることです。今年はおとなしいものですが,ここはハリケーン銀座です。採掘が始まれば,日経も指摘するように「生産コストの低減」が課題になります。すなわち、1バレルのアブラを掘り出すため,どれだけのエネルギーを注入しなければならないのか、エネルギー的に採算が取れるのかということです。1バレルを掘り出すために,それ以上のアブラ(エネルギ−)が必要になるようならば,それでは採算が取れません。どれだけの量が埋まっていようが,エネルギー的に採算に合わなければ,そのアブラは使いものになりません。

ピーク論者が常々指摘するように,ピーク以降もまだまだ,アブラは大量に残っています。しかし、ピーク以前とは違い,アブラが見つかるのは深海やハリケーン銀座になり、それを使えるようにするためには膨大なエネルギーが必要になります。

しかも,老朽化する既存油田の減耗を補うためには,このクラスの油田が毎年、次々に発見されていかなくては、とてもじゃない、G&Mのように楽観することはできません。「ん!」が指摘するように久しぶりの「内野安打」でこのばか騒ぎ。しかも,この「試掘成功」の知らせ、「大本営発表」的にたくさんのメディアで報道されてはいるものの、必ずしも確認のとれたものではなく,「内野安打」ですらないかもしれません。何か、政治的な意図を持ったものであるかもしれないことを指摘する声も出始めています。(例えばエネルギーブレティン。)

こういうふうに、情報が錯乱するのもピーク時代のひとつの兆候,でしょうか。

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