Saturday, August 26, 2006

ノルウェーのアブラ/Norwegian oil.

民間最大の石油会社のエクソンの社のCEO(最高経営責任者)、レックス・ティラーソンが23日にノルウェーの会議で行った発言があちこちで報道されています。(日本語ではライブドアニュース
など。)
「技術の進歩が生産性向上や新油田の発見をもたらし、必要な原油供給に貢献する」(上記,ライブドアニュースより)ということで、相変わらず楽観的な見方を披露しています。まあ、民間企業の人間が好き勝手に何を言おうとかまわないのですが,それを真に受けてたら大変なことになります。

彼の楽観論を支える証拠としてあげられるのは会議開催地のノルウェーです。
「現在、ノルウェーの原油輸出量はサウジアラビア、ロシアに次いで世界3位。ただ、40年前は同国が原油を産出するとは考えられていなかった」。たしかに、北海油田が発見され,1971年にエコフィスク油田で生産が始まるまで,ノルウェーが産油国になることは考えられていなかったのは事実です。しかし、ここで言及されていないのは、ノルウェーの原油生産がすでに2001年には頭打ちになり,激しい勢いで減耗を始めていることです。

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(グラフ:Graphoilogyより)

ノルウェー(と英国)はサウジやロシアなどと違い,アブラ生産に関するデータがそれぞれの油田ごとにちゃんと発表されているので,ピーク研究者にはありがたい国です。発表される数字をもとにしたグラフはあちこちで目にすることができます。グラフィオイロジーという研究者のサイトには、上記以外にも、各種のグラフが掲載されています。

発表されている数字によれば,ノルウェーの究極可採埋蔵量は320億バレルと見積もられています。このうち、今日までに生産された原油はトータルで185億バレルですから、まだ未発見のものを含め,135億バレルのアブラが残っていることになります。2004年の年間生産量が10.7億バレルなので減耗率(10.7億/135億)は8%近くなります。つまり,現在のレベルで生産を続けていけば,12年ほどでノルウェーのアブラは底をつくということです。

まだ見つかっていない油田がどこかにあるのではないかと期待を持つことも可能ですが、現実には世界の油田発見のピークは1965年のことであり,現在,世界の石油生産の半分以上を賄う油田のほとんどはそれまでに発見されたものです。それ以降に発見されたものは規模の小さいものがほとんどであり,数少ない例外がノルウェーと英国の北海油田だったのです。そして,その北海油田にしても発見からわずか40年でピークを迎え,急激に減耗しており、これから10年かそこらで底をついてしまうのです。

これでは、石油会社のトップから「安心しろ」といわれても安心できるはずがありません。

(26/8/6)

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