Sunday, December 18, 2005

バヌヌを即刻解放せよ/Free Vanunu now!

標高千メートルの高原の町に引っ越すまで、ずっと、シドニーの繁華街、キングス・クロス近辺で暮らしていた。キングス・クロスってのは売春宿、セックスショー、エログロのいかがわしい店があったり、バックパッカー御用達の安宿があったり、終夜営業の飲屋やパブがあったり、ライブバンドの出るパブがあったり。それなりにボヘミアンで、コスモポリタンな雰囲気もあった。だらりとあっけらかんとしたシドニーではそれなりの緊張感があるエリアで、また都市暮しにもどるとしたら、あのへんしかないだろうなあ、なんて思う。いろんな場所を逃れて来た逃亡者が隠れる場所もたくさんあった。

今から20年ほど前のことだが、同じ界隈に暮らしていたのがイスラエルを逃れてきたモルデハイ・バヌヌだ。それまで19年間勤務したディモナで行われている核兵器開発を世界に暴露しようと決意するのは、このあたりで暮らしていた時のことだ。バヌヌはクロスにある教会でキリスト教に改修した。

バヌヌに直接面識はないはずだが、どこか、クロスの深夜営業のカフェで言葉を交わしたような気がずっとしている。あの頃、クロスのどこかですれ違ったり、出会っていてもちっともおかしくはない。

その後、バヌヌはイスラエルの核開発を英国のメディアにすっぱ抜く。極秘の核開発を暴露されたイスラエルはモサドの女エージェントを送り込み、その罠にはまったバヌヌはローマで拉致され、イスラエルに連れ戻されてしまう。

国家反逆罪にとわれたバヌヌはそれから18年間、監獄で過ごす。そのうちの11年以上は独房暮らしだ。

バヌヌは2004年4月、ようやく釈放されたが、いまだ「自由の身」ではない。もうこれ以上何も暴露することはない、と言っているにも関わらず、バヌヌにはイスラエルを出ることが許されず、外国人との接触も禁止され、国内での行動も大幅に制限されている。

それでも、バヌヌは禁をやぶり、いくつか、外国のプレスとのインタビューに応じてきた。20年近い監獄暮しだから、内容に目新しい情報はないが、イスラエルの核開発を告発する態度は変わっていない。

大丈夫かなと心配していたら、2005年11月18日、バヌヌは再びイスラエル警察に逮捕されてしまった。彼の裁判は来年1月15日から始まる予定だが、焦点はイスラエルの核開発でもバヌヌの国家反逆でもない。

裁かれるのは、万人の表現の自由であり言論の自由だ。

人間には、誰にでも、何の制約も受けずに、ものを言い、表現する自由があるならば、イスラエル政府がバヌヌの口を塞ぎ続けることをこれ以上許すことはできない。

世界は勇敢な告発者がイスラエル政府の手で20年近く獄につながれるのを許してきた。しかし、もうこれ以上、イスラエル政府の行いを黙認することは許されない。

イスラエル政府は即刻、バヌヌを完全に解放せよ。

参考サイト
抗議の宛先("Free Vanunu now!"など簡単でも構わない)

関連情報
ナブルス通信
P-navi info
アムネスティひろしま
(18/12/5)

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