Sunday, December 11, 2005

ドナ・マルハーンらのパイン・ギャップ市民査察/Pine Gap and PG

平和活動家でイラク開戦前に「人間の盾」となり、その後、占領後のイラクに復興支援のボランティアで入り、昨年4月、ファルージャで人質になったこともあるドナ・マルハーンが、今度はオーストラリア政府に逮捕された。

彼女は他の3人とともに12月9日未明、オーストラリア大陸の中央、エアーズ・ロック(ウルル)の近くにあるパイン・ギャップという世界でもっとも秘密のベールに包まれた軍事施設をテロ容疑で「市民査察」しようとして逮捕された。

彼女のブログによれば、「すべてのテロに反対するクリスチャン」という団体は、パイン・ギャップがテロ活動の根源であるとして、テロ情報を求めるホットライン電話にその旨通報し、ロバート・ヒル防衛大臣にも連絡をとり、調査を要求したが、聞き入れなかったため、今回の査察行動となったとしている。
http://groups.yahoo.com/group/ThePilgrim/message/177

この軍事施設は米国が世界に展開する情報網の中でももっとも重要で、巨大なもののひとつと言われている。1968年に設立されて以来、巨大なレーダーや人工衛星から収集された情報を処理し、ミサイルや爆撃機に目標を通知し、イラク攻撃の際にもここが実質上の「最前線」だったと言われている。米豪あわせて1000人近い人員が勤務し、軍関係だけでなく、CIAから国家安全保障局(NSA)、国家偵察局(NRO)などの情報関係機関もここに駐屯していると言われている。

4人の裁判は来週からアリス・スプリングスで開かれる予定だが、テロに敏感なこの御時世、場合によっては最高7年の刑が言い渡される恐れもある。

驚くのは、上記のブログによれば、この団体は11月ころからパイン・ギャップの査察に向かうことを防衛大臣や当局に連絡してきたというのに、4人がやすやすと施設に侵入してしまったことだ。これほどの施設にこれほどやすやすと侵入できるとは。

11月15日付け、まだ、パイン・ギャップに出発する前の彼女からの報告はTUP速報565で日本語で読める。
http://blog.goo.ne.jp/harumi-s_2005/e/cea6c66b600687d0042905c4099935f5

査察チームの写真や宣言は下記のサイトで読める(英語)。
http://www.melbourne.indymedia.org/news/2005/12/100969.php


ーーー(TUP速報565より)ーーー
私は、その昔、良心的高校生だった1980年代にオーストラリアのロックバンド、ミッドナイト・オイルのおかげで、パイン・ギャップのことを知るようになりました。

「米国軍が命令を承認したノノ」と、私はリーダーのピーター・ギャレットにあわせて大声で歌ったものです。そして、自分の土地に米軍施設があるのを快く思えない何千人もの他のオーストラリア人とともに、彼も加わったパイン・ギャップ閉鎖全国キャンペーンに参加したものでした。
ーーーここまでーーーー

このTUP速報565の中で言及されるミッドナイト・オイルの曲は「米軍」という曲で、フィル・コリンズや高橋幸宏などとも仕事をしたことのある敏腕プロデューサー、ニック・ロウネイが絶妙なプロダクションをしたアルバム「10,9,8,7,6,5,4,3,2,1」に収められている。82年のリリースで、確か日本でも
出たはずだ。

その次のアルバム、「レッド・セイルズ・イン・ザ・サンセット」は東京のソニー・スタジオで、やはりロウネイのプロデュースで録音された。スタジオに入り浸ったロック写真家の伊藤ヒロのカメラの音が使われたり、トイレで録音したり、それなりに楽しいアルバムだった。日本が世界にほこるコラージュ・アーティスト、木村恒久が担当した干上がったシドニー湾のジャケットは印象的だった。

バンドのシンガー、ピーター・ギャレットは前回の選挙で労働党から出馬して当選し、現在は国会議員だ。20年以上前、「米軍の御墨付きを与える/それはお前の国にとってはマイナス/見渡す限り、爆弾や塹壕が並ぶ/誰が問題を設定するのかノノ」と歌ったものだが、皮肉にもドナ・マルハーンが逮捕された金曜日、ほかの労働党の議員とともに「反テロ法」に賛成票を投じた。「反テロ法」についてはまた後日、書くつもりだが、自分が20年前に歌ったような歌を歌ってたら逮捕され、何日も罪状も知らされず拘束されても文句を言えないような内容の法律だ。こんな法律に賛成票を投じるとは、党議拘束なのだろうが、マルハーンなど若い連中を鼓舞したかつての闘士は、すっかり与党の犬になってしまったようだ。皮肉ぶりには呆れるしかない。
(11/12/5)

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