Tuesday, December 20, 2005

歯なしのはなしとシェイン・マガウアン/Pogue Mahone

入れ歯がゆるゆるになったんで、歯医者に行ったら、修理に何日か、かかるという。それで、何日か入れ歯なしで暮らしてる。上のほう、残っている歯は片手で数えられるくらいだし、下のほうもぼろぼろと抜けはじめている。でも、ものを噛むのに支障はなく、自分では気にならないけど、一緒に暮らす相棒は、お願いだから、笑わないでねと懇願する。そう言われるとよけいに笑いたくなって、にかっと笑って鏡を見ると、まるでポーグスのシェイン・マガウアンのようだ。

ポーグスはもともとPogue Mahone(ゲーリック語で「ケツをなめてちょうだい」ってな意味)というバンド名で80年代に登場し、哀愁を帯びたメロディにペーソスとひねりのある歌詞、とてもアイルランドな音楽をやる連中だ。マガウアンは、これまたアイルランドの伝統なのか、アル中の気があり、歯がぼこぼこで、いつ死亡のニュースが伝わってきてもおかしくないような暮しをしていたはずだ。でも、まだ、確か、くたばっていない。はずだ。まあ、こっちも似たような暮しで、まだ、くたばってないけど。

「レイニー・ナイト・イン・ソーホー」なんてヒット曲を鏡の前で歌ってみる。fだとかvのように、上の歯を必要とする音はどうやって発音するんだろう。

それから、何枚か、ポーグスの古いアルバムを引っぱり出して聞く。あの曲はどのアルバムに入ってたんだっけ。とかなんとか。手許にあると思ったアルバムがどこかへ行っちゃったことにも気付く。あれれ。

近所のレコード屋へ行って、なくなっているアルバムにについて尋ねると、ニ-ル・ヤングの新盤かけてるくせに、「うちはそういう人気バンドのは置いてないんだよね」なんて言われてしまう(ちょっとしか聞かなかったけど、ニ-ル・ヤングの新盤は良さそうだ)。あれれ、ボーグスってそんなに人気バンドだったっけ。

うちへ戻り、ネットで調べるとけっこうライブ活動もやっているようで、今年7月には日本でもコンサートをやったそうだ。ボーグスなんて、過去のバンドで、マガウアンはほとんど死にかけ、なんて思ってたのは、あらあら、自分だけだったようだ。世間ではなかなか、現役の人気バンドだったんだことを改めて確認する。自分の無知にはあらあらだけど、嬉しくなってしまう。

こっちだって、もう何日かしたら、ぴかぴかの入れ歯だぞ。
そしたら、誰ももう、笑うのを止められない。ぞ。
(20/12/5)

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