Tuesday, October 31, 2006

沖縄ロハス/a slow life.

3冊まとめて感想の2冊目は、「沖縄ロハス(ウチナーロハス)」。
知事選たけなわ,パトリオットミサイルが配備されたことを「県民は喜んでもらいたい」と防衛庁長官が発言してはばからない沖縄に関する本です。こんな政府をいつまで我慢しなけりゃならないんでしょうね。本当に。ふざけんじゃねえ。あたしゃ、我慢しませんよ。

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といっても,「沖縄ロハス(ウチナーロハス)」の本の視点はそういう政治的なところではなく,もっと地に足がついたものです。あたしはオイルピーク時代という観点から,とても楽しく読みました。ピークの到来はわかったものの,それじゃ,どうしたらいいのか,という次元で参考になる一冊です。

内容は盛りだくさんです。

●沖縄野菜
●パーマカルチャー
●沖縄農業
●かりゆしウェア
●沖縄マングローブ
●泡瀬干潟
●ウチナースローフード
●循環型社会の礎

自分は沖縄に行ったことは片手で数えられるほどしかありません。いつもいつも、夜な夜な泡盛と三線に撃沈され,何がどうやら,むにゃむにゃで、あんまり覚えておらず、決して「専門家」じゃありませんが、それなりに、よだれの付いたメモをたどりながら,いくつか沖縄に関するラジオ番組を作ったり,エーゴでオキナワに関する本も書いたりしてきました。そんな素人の視点から「沖縄でパーマ」について,この本で書いています。

さて、沖縄といえば、泡盛もそうですが,おいしい食べ物をいつも思い出します。
スバにゴーヤ、いもに島豆腐,チャンプルーにンブシー、ヤギに豚にイカにグルクンなどなど。書いているだけでよだれが出そうになります。

でも、筆者のひとりで沖縄・奄美スローフード協会を発足させた田崎聡のによれば、「2002年の日本の食料自給率は先進7カ国の中でもっとも低く,その中でも特に主食の米や穀物の自給率は,沖縄県で2.2%と極端に低くなっている。野菜類は32.5%とはなっているが全国に比べても一番低い数字である」ということです。

うーん,そうか,沖縄で口にするものって、たいていはどこか,よそからもってきたものだったんだ。アブラが減耗していくこれからの時代,島の食料事情は大変そうです。

でも「しかし,私たちはもう一度,スーパーもコンビニもまったくなかった時の沖縄の食生活を思い出して,あえて休日,ゆっくり子供と畑に行って野菜の収穫をしたり、郷土料理を作って楽しむと言ったことを実践していかなければ,長寿=沖縄のコンセプトを維持していくことは不可能であろう」と考え,行動する田崎のような人間がいることは貴重です。

この本は沖縄という場所でどんな食物が育てられるのか,どんな食べ方ができるのか,衣食住はどうなのか、ゴミはどうすればいいのか,そういう生活の根源的な部分に光を当てた本です。アブラ時代の到来前,自給していた時代を照射したりしながら,現状をあぶり出し,これから,何ができるのかを問いかけます。

考えてみりゃ,アブラがじゃぶじゃぶと使えるようになる前,それぞれの人間の生存は,衣食住の生産から「ゴミ」の処理まで,それぞれが暮らすバイオリージョン(これは「江戸時代の国」にほとんど一致するようです)でやってたわけで、それは沖縄に限ったことじゃありません。自分の出身地の信州や、この本を編集した天空企画の智内の出身地である伊予でも、江戸でも下野でも、それぞれの地域で手に入る自然資源を融通し,慎ましくやってきたわけです。

ピーク以降の暮らし方は近代国家の単位ではなかなか編み出せないと思います。だって,近代の「国」そのものがアブラに浮かんでいるんだから。東京から沖縄までって、台湾や韓国から沖縄までより遠いんだから。そういった物理的距離を圧殺できたのは、安いアブラのおかげなんですから。

もちろん、丸ごと昔に戻るということはあり得ませんが、安いアブラがじゃぶじゃぶ手に入る時代が終わるにつれ,昔の知恵は思い起こされなければなりません。「日本」という国の中で一律な食品や一律なやり方が通用するようになったのは、産業化、近代化以後のことであり、その前にはそれぞれの地域で,身の丈にあった「自給可能な時代」があったわけです。

ピーク以降の時代の処方箋はそれぞれの地域,場所によって違います。気候,風土が違うからトーゼンです。グローバリゼーションの対局として再ローカル化が言われていますが,各地について一冊,早急にこういう本が書かれることが対策のひとつでしょう。たとえば、「信濃の自給」とか、「江戸の自足」,「伊予の生存」とか、これをきっかけに、それぞれの地域で近代化(安いアブラ)以前の暮らし方を地域ごとに見直す生活を見直す本ができるといいですね。

地域の特産品が生まれたのは何も観光客目当てだったからじゃありません。その地域ごと、気候や風土にあわせ,育ちやすいものを育て、それを保存し,食べるというように、地産地消の文化の中から自然に生まれてきたものです。まだ,記憶の残るうちに、各地の衣食住の文化を眺めることは,ピーク以降の時代の暮らし方の参考になることは間違いありません。

この本は,それを自覚させてくれます。そういう観点から,オキナワにキョーミのない人にもこの本はとてもおすすめです。

(ただひとつ、難癖を付けると,帯の売り文句「自然とともに生きる。リアルなロハスは沖縄にある」ってのは気になります。というのも,パーマカルチャーだとかロハスだ,スローあーだこーだと口にする人たちがケータイに縛られ,新幹線やヒコーキを疑問をもたずに利用して,せかせかとしているのを目にしているからです。スローなんとかとかロハスとか,環境を本気で気にするなら,まずヒコーキをやめろ。沖縄へも本土から行くなら,えっちらおっちら船で行ってこそスローでしょ。んな苦言を呈してみたくなります。もちろん,誰でも,いますぐ取りかかれるわけじゃないけど,できるところから,ギアをひとつずつ落としていかないとね。)ほい。

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