Sunday, December 04, 2005

Wild world

夏が来た、なんて言ってたら今日は嵐に停電。

うちの近所でもビールを飲みはじめる頃(午後5時)から空がゴロゴロいい始め、6時ころから土砂降りの雷になった。キャンベラでは折れたの下敷きになって、人がひとり、死亡したそうな。

マスコミはヘロインの運び屋がシンガポールで処刑されたことばかり取り上げている。日本の新聞にも豪州発で取り上げられるほどだ。運び屋が暮らしてたメルボルンでは、死刑執行の時刻に教会が男の生きた年のぶんだけ鐘を鳴り響かせ、昨夜から朝にかけ各地でローソクを灯す黙とう集会も開かれたそうだ。クイーンズランドの州議会は処刑のころ、一分間の黙とうをしたそうだ。いつもや正論を
述べることが多い緑の党の党首、ボブ.ブラウン上院議員まで 一緒になって、あれやこれや、言っている。

以前、ヘロイン中毒の連中の中で暮らしていた。試したこともある。体にあわなかっただけで、ヘロヘロに染まる機会はいくらでもあった。何人も、才能があり、若い音楽家や写真家、アーティストなんかが過剰摂取で死んでいった。大騒ぎされることもなく、たいてい、誰にもみとられず、死んでいった。暗い裏道で、注射針を血管に突き立てたまま。ゴミ箱の中でげろにまみれて死んだやつもいる。そんな連中のことを知っているからか、金のためだけに志願した運び屋になぜこれだけ同情が集まり、大騒ぎをされるのかわからない。

死刑そのものには反対だし、オーストラリアへのトランジットで捕まったとか、色々、うさん臭い部分はあるが、ちょっと、これは過熱し過ぎじゃないか。クイーンズランド議会はヘロインの運び屋が外国で処刑される度に黙とうするんだろうか。日本やアメリカのいくつかの州では死刑が執行されてるってのに、マスコミは取り上げることもない。ブラウン議員は対テロ法の審議では司法の独立が犯されかねないって言っているくせに、シンガポールの司法の決断に介入しろってのも筋が違うんじゃないだろうか。

普段は某略説なんかあまり信じない方だが、これだけマスコミが大騒ぎし、世間がそれにのっかると、当然ほかのニュースは隅に押しやられちゃうわけで、何か誰か、こっそり隠しときたい出来事がほかにあったんじゃないかって疑ってしまう。

んで、7時を過ぎた頃から停電。でも、うちでは平然としたもの。懐中電灯をつけ、ローソクに火をつける。晩御飯の支度中だったけど、鍋をトランギアに移して平然としたもの。あんまり、驚きもしなかった。近所ではどうしてるかしらないけど、うちではこの程度のことはまったく当たり前に、顔色ひとつ変えない。外では雷鳴が鳴り響いてるってのに。

停電で一番気に触るのは、コードレスの電話器。ビービーとうるさくてしかたがない。どこかに静めるスイッチがないものか、探してみたけど、停電することなんか想定しないで作られたに違いない。停電する度に布でくるんで引き出しに放り込む。ピーピーとうるさいったらありゃしない。もう30分近く鳴きっぱなしだ。

アヒルは頭の上で雷鳴がゴロゴロ、グワオンってな無気味な音を立ててるというのにまったく意に介した様子もない。蛙も喜んで大はしゃぎ。鶏はあんまり濡れたがらないのか、早めに床に着いたというのに。

で、イカのチリ炒めにサラダ、イラン式のそら豆とディルを米に炊き込んだ晩御飯を食べる。ローソクの灯で、なんて久しぶり。

夕食のあと、近所を懐中電灯片手に歩く。丘の上の病院だけは灯がこうこうとしているけど、民家はみんなローソクの灯なのか、ふわりとしてる。丘の上にあがると、停電してないエリアだけが闇の中に浮き上がっている。

もう3時間近くも停電したまま。午後、訪ねてきた友人はパーティに誘ってくれたけど、こんなに停電したらどうするんだろうか。DJが入るとかいってたけど、合唱でもしてるんだろうか。うちなら、手回しのラジオだけじゃなく、手回しの蓄音機にピアノ、バイオリンとエンタテイメントには事欠かないないけど。

なんて思いながら手回しラジオをつけると、雷鳴の合間に今朝処刑された運び屋のニュースが聞こえてくる。幸いなことに、「天も彼の死を嘆き悲しんでる」とまで言う人はいない。
(4/12/5)

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