Thursday, October 06, 2011

世界占拠!/Occupy the World!

(フクシマ以前)世界で稼働する原発の数は433基といわれてましたが、世界各地の「占拠」運動の数はそれを超えたようです。

でもまあ、この数字には平壌(北朝鮮)なんてのが入っているんで,ちょっと,あれですが。日本では東京が入ってますが,今のところ具体的な「占拠」日程や場所はないようです。オーストラリアでは2カ所,ニュージーランドでも3カ所。具体的にどんな「占拠」活動が起きているのか分かりません。現実的なアクションはこれからってところでしょうか。

この背景にあるのはピークオイル,廉価な石油時代の終焉です。2010年の「世界エネルギー展望」で在来型原油のピークが2006年だったと国際エネルギー機関(IEA)が認めたことは既報の通りですが,IEAは「でも,どうってことないよ」ってな論調でした。2008年に始まる経済危機,食糧不足,そして2011年の国家財政破綻,食糧危機はピークが引き起こしているものであり,これからもだらだらと続くことが見えないようです。現在の石油漬けの暮らし,経済は廉価な石油がどんどん減っていく時代にはとても成り立たないものです。そして,それは人間の生存に不可欠な食糧を直撃します。(今年年頭に書いた「2008年の再来か?」参照)


FAOの食糧価格指数より。


FAO米の輸出価格推移より

食糧価格は今年に入ってからずっと高止まりを続け,米の輸出価格もじわじわと上がってきてます。世界中で,腹を空かした人が増えていけば、世界を「占拠」し自分の手に取り戻そうとする人たちが増えることは間違いありません。

Monday, September 26, 2011

Bring it on

It was one of the best games I have ever seen. And thank god, we came out winner. We will smash the Cats. Carn the Pies!




via http://youtu.be/r9kCJzTMzJY.

Tuesday, September 06, 2011

中国に公金で売り込みをかける原発企業:ウィキリークス

日本に暮らす人にとって東アジアの原発は他人ごとではあり得ない。フクシマの放出した放射能のほとんどは西風で太平洋に流れた。もし中国(や朝鮮半島)で原発事故があれば,西にある日本列島には大量の放射能が降り注ぐだろう。

だから,中国(や朝鮮半島)の原発にも,すくなくとも、日本の原発と同じくらいの関心を払わなければならない。英ガーディアン紙は8月25日付けでウィキリークスが暴露した公電をもとに中国の原発事情をかいま見る記事が掲載されている。

ウィキリークスが今回公開したのは2008年8月29日付けで北京の米大使館からワシントンの国務省、エネルギー省,商務省,国防長官,国家安全保障会議,原子力規制委員会,東京、モスクワ,パリ、ニューデリー,ソウル、ヴィエナ、ブラッセルの米大使館,香港の領事館,台北の在台湾協会(実質的な大使館)などに宛てられた公電

中国は2020年までに50~60基の原発増設をもくろんでいる。北京大使館発とされる問題の文書は,自国の原発企業であるウエスティングハウスとGEがふるわなかった原因について触れ,対策を進言している。
原発の海外での売り込みがどのように行われるのか,そして,それに公金で運営される大使館がどのように絡んでいるのか,「官民一体」の原発セールスの実態が垣間見えて非常に興味深い。

三菱重工(文中に出てくるアレバのパートナー)や日立(文中に出てくるGEのパートナー)や東芝(文中に出てくるウエスティングハウスの親企業)といった日系の原発企業が海外で商売するときに,日本の大使館もこんな感じで動いているに違いない。そんなことが国益だとされ、日本人の払う税金が世界の原発社会化に使われている。原発社会にけりを付けるためには,日本の原発を止めるだけではだめだ。海外公館によるこんな税金の使い方もやめなければだめだ。

中国の原発開発の現状についてはウィキペディアの中国の原子力発電所にリストがある。


(地図はhttp://news.livedoor.com/article/detail/5403698/より転載)

以下はウィキリークスが公開した公電の要約。

●中国の原発プログラムではこれまで競争入札が行われたことは一回しかなかった。応札したのはウェスチングハウス(AP1000)、アレバ(EPR)、そして、アトムストロイエクスポート(VVER - 1000)。
ウェスティングハウスは、三門に2基と海陽で2基、合計4つの原子炉建設契約を獲得した。それをのぞけば,残りの原発は公開入札を伴わず,高度な政治的な配慮に基づくものであった。ウェスティングハウスの落札にしても政治的な決定であった疑いが強く,そのあと,すぐにフランスのアレバとロシアのアトムストロイエクスポートは入札によらず,契約を獲得した。
アレバが受注したのは広東省の台山原発にEPR2基。20年間の燃料供給、使用済み燃料の再処理の支援込みで$160億ドルで受注した。アトムストロイエクスポートは田湾原発の2基増設を受注したが、それにはウラン濃縮装置の供給というおまけもついていた。現在計画中,もしくは建設中の原子炉は30いくつかあるが、4基のAP1000、2基のEPR,2基のVVERをのぞけばすべてはCPR-1000である。

●中国の原発はずっと加圧型(PWR)が主流で,東芝の子会社であるウェスティングハウスは主力のAP1000の売り込みをもくろんでいた。採用を決めた原発の大半を占めるCPR-1000はフランスのフラアトム(現アレバ)がウェスティングハウスのデザインに基づきフランスで「国産化」したCPY型を90年代に導入し、「国産化」した100万キロワット級PWRの原子炉。大半の部品を中国メーカーから調達できるという利点があり、比較的安価で、建設期間が短いと言われている。

●国家エネルギー局(NEA)の張国宝によれば、中国は原発の発電量を2020年までに50~60GWに引き上げる計画だという(現在の目標は40 GW)。これはさらに10~20の新規の原発に匹敵する。この目標を達成するには,今後5~6年以内に建設が開始されるだろう。これらの原発はおそらく内陸部に建設されることになるだろう(注:現在はすべての原発が海岸沿いにある)。これは内陸地方における電力不足に起因する広範な地域での停電を解消する狙いがある。
中国はまだこれらの原発に関する入札プロセスを発表しておらず、入札プロセスを経るかどうかもかなり疑わしい。たぶん、高度の政治決定によるのではないかと思われ,それもプラントごとの発注ではなないのではないかと思われる。

●GEの中国への原発売り込みの要求に応え、大使館は北京駐在のGE担当者と会談した。中国はGEの沸騰水型原子炉(BWR)に全く興味を示さず,GEニュークリアは、前のに入札に招待すらされなかった。
GE担当者によれば、国家発展改革委員会(NDRC)は、加圧水型原子炉(PWR)中心主義できたが,BWRにも理解を示しつつあるようだ。中国の業界筋によれば,BWR導入で部品の調達先が広がることは中国の原子力産業に有益だと考えられている。特にCNNCはCPR - 1000だけでは2020年までに,最大30GWしか容量が増やせないことを憂慮している。またBWRには加圧器や蒸気発生器などがいらないため,必要な部品の数も減る。
GEとパートナーの日立はすでにABWRを4基建設し,日本と台湾でさらに6基を建設中だ。建築期間もPWRは少なくとも48カ月かかるのに比べ、ABWRは37カ月しかかからない。ABWRは唯一稼働中の第三世代原子炉でもある。昨年日本で起きた大地震の震源に非常に近い場所に立つABWRは破損もせず,放射能も放出しなかった。競争相手の技術にも耐震設計はなされてはいるが,まだこのような実戦をくぐってきてはいない。GEの中国代表はそう締めくくった。

●GEは中国へのBWR売り込みに政府の支援を求めている。ウェスティングハウスも同様に支援を求めている。北京大使館はGEとウェスティングハウス双方の原子力権益を代表しており、どちらの技術に肩入れするものではない。
中国の原発市場に食い込むためには競争入札を求めること,将来の計画に最新のテクノロジーを使った原子炉を推奨することが米国企業の権益を有効に拡大できるものと思われる。
具体的にはCPR - 1000ではなく、第三世代の原子炉というより安全な技術の採用を中国に求めることだろう。しかし,それだけではもうひとつの最新型であるフランス製のEPRを薦めてしまうことにもなりかねない。それを避けるためには,ABWRとAP1000両方が持つ高度な「受動安全システム」の存在を強調することだ。これはポンプを使った冷却システムではなく自然の還流など自然の物理的な力に依存する安全システムであり、外部電源や人間の介入を必要としない。これに比べでEPRの安全システムは障害が発生した場合、さらに何層もの「能動的」な安全策をつけることでリスクを回避させようとする。
また、GEとウェスティングハウス双方の商機を増やすため、将来の原発建設をオープンで透明な公開入札によるよう中国に求めていくことも欠かせない。
アメリカ政府がどのようなセールスをかけるにせよ,フランスとロシアを押さえるためには,ハイレベルな努力が継続して行われなければならない。

Monday, September 05, 2011

原発推進派に具合の悪い真実:ウラン供給

原発推進には具合の悪い真実がある。
燃料となるウラン供給の問題だ。「現在の消費レベルで80年は大丈夫なだけの埋蔵量がある」というような説明を耳にしたり目にすることがあるかもしれない。こうした説明はどんな再生不可能な資源についても言われることだが,安心することはできない。まず,「現在の消費レベル」で「埋蔵量」を単純に割るという計算方法は現実的ではない。さらに問題なのは,埋蔵量がすべて掘り出せるわけではないことだ。ピーク以降、鉱産資源は手に入りにくくなり,質も劣り,割高になることはピークオイル問題で既に指摘されている通りだ。

フクシマ以前の2011年1月現在,世界全体では442の発電用原子炉が電力網につながれていた。その設備容量は3億7490万kWh。実際に供給した電力は2009年が2560TWhe(2兆億5600億kWh)で、これはこれまでの最高だった2006年を1000億kWhほど下回る。2007年からの凋落傾向が続いており,2008年に比べると410億kWh減になる。フクシマのおかげで, 特にOECD諸国では原発からの後退、停滞はさらに加速されるかもしれない。

しかし,中国、インド、ロシアを含む非OECD諸国ではフクシマにも関わらず原発の建設ラッシュが進行している。World Nuclear Associationによれば、中国では26基が建設中、52基が計画されているという。その他、120基の検討が行われており,すべてをあわせると198基というものすごい数になる。これらがすべて建設されれば、現在最大の原発国のアメリカを簡単に凌駕するだろう。ロシアでは現在10基の建設が進み14基が計画中、30基が検討されている。インドでは5基が建設中、18基が計画段階にあり,40基の検討が進んでいる。検討中のものまで含めれば,この3国だけで300基以上の新しい原子炉が作られることになる。まさに原発ラッシュだ。これらがすべて建設されたとすれば,現在の発電量の2倍以上の発電量が見込まれ、建設中,計画中のものだけに限ったとしても,現在の6割増になると見られている。原発ラッシュに伴い,ウランへの需要も急増する。国際核エネルギー機関(IAEA)は、ウランの需要は2005年の7万トン弱から2030年には10万トンに増えると予想している。原子炉の数が増えるに伴い,ウランの需要は増えていくが,供給はどうか。

天然ウラン供給に関しては楽観的な見通しが多いが,現在でも世界の原発の燃料として必要な7万トンのうち,鉱山から掘り出されるのはせいぜい5万トンである。鉱山から掘り出されるウランは世界の需要の2/3強しか満たしていない。2009年,ウランの採掘量は前年に比べて7000トン増だった。2010年はほぼ5万3600トン(約3000トン増)。問題なのは,増加のほとんどがカザフスタンからのもので、カナダやオーストラリアなどウラン大国の生産は横ばいが続いていることだ。カザフスタンのウラン生産は2008年から2009年にかけ6000トン、2010年には約4000トン増加したが、これが世界全体の増加とほぼ一致する。オーストラリアは,鉱山が気候変動などの影響を受け,安定した操業ができなくなっている(2010年には前年比2000トン減)。まだカナダも2001年の生産ピークから落ち込みが続いている。しかも,カナダの生産には本来二次供給と見なすべきテイル再濃縮も含まれている。


World Nuclear Associationのデータに基づく世界のウラン生産
グラフはour finite worldから転載

世界の国別ウラン生産についてはここを参照。


天然ウランの一次供給の増加を一手に担い「ウランのサウジアラビア」と呼ばれるほどのカザフスタンだが、その生産はあまり長続きしそうではない。IAEAのレッドブック(2009年版)は、カザフスタンのウラン生産は2015年から2020年には年間2万8000トンで頭打ちになり,その後2025年までに1万4000トンに減り,2035年には5000から6000トンにまで減ると予測している。原発の耐用年数を遥かに下回るわずか20年かそこらの間に、そこまで減ってしまうと見られている。

カナダやオーストラリア,ニジェールやナミビアが生産をあげる可能性はどうなのか。カナダではカナダのカメコ社,フランスのアレバ,出光興産の現地子会社、東電の子会社が出資するシガー・レイク鉱山の開発が進んでいる。フル操業すれば年間7000トンの生産が見込まれる鉱山だが,操業開始は2011年頃とされているが2013年を超えそうで、フル操業となると2016年以降にずれ込みそうだ。ミッドウエスト鉱山も「2010年頃にウラン生産が開始される見通し」だとされているが,操業開始は延期されている。

現在,原発の燃料となるウランのうち,2/3しか鉱山から掘られていないとすれば,残りはどこからくるのか。それは過去の在庫だ。1970年代にウランの価格が低かった時代に蓄えられた民間在庫。もうひとつは50年代から70年代にかけ,東西両陣営で作られた核弾頭だ。

兵器として在庫したウランの切り崩しは、80年代後期の冷戦の終結で核軍縮が進んだ結果だ。ソ連崩壊の混乱のなかで,廃棄の決まった核兵器のウランの盗難や拡散を恐れ、1993年、アメリカはロシアとのあいだに高濃縮ウラン500トンを向こう20年間にわたって買い取る「核兵器解体に伴う高濃縮ウランの処分に関する米国およびロシアの政府間合意」(高濃縮ウラン合意)を締結した。それまでに作られた核弾頭の8割、核弾頭2万発に相当する量が民間の原子炉燃料に転用され、ロシアにはその代償として120億ドルが支払われるというのがこの合意の内用だ。

兵器用の高濃縮ウラン(HEU)には最低でも20%,通常は90%のウラン235 (U-235)が含まれている。これに劣化ウラン(たいていはU-238)やU-235が0.7%程度の天然ウランなどを混ぜて低濃縮し、U-235が5%くらいにして原発の燃料(LEU)にする。この過程で,HEU500トンは約27万トンのLEUになる。1999年から毎年30トンのHEU売却が始まり,09年までに375トン(核弾頭1万5千発相当)が10,868トンのLEUに変換された。これまでにアメリカからロシアには85億ドルが支払われた(米ウラン濃縮会社,USECによる)。

また,アメリカからもこの条約のおかげで不要になった高濃縮ウランが174トン,市場に供出された。米ロ合計、LEU換算34万トンがこの「メガトン(兵器)をメガワット(原発)に」プログラムから市場に放出されたと見られている。つまり,ここ15年ほど、原発の燃料の1/3近くは、過去に爆弾という形でストックされていたウラン(=二次供給)で補ってきたのだ。問題はこのプログラムが2013年に終了することだ。

それ以降,原発ラッシュで急増する需要を満たしていくには,これまで以上にウランを掘り出すか、核軍縮をさらに進めるか、この二つが考えられる。まだ,米ロなどが所有する核兵器には2,000トンのHEUが「在庫」されている。また,世界には「兵器級」のプルトニウムが260トンある(日本には40トン以上)とされており,それらをMOX燃料の「在庫」と見ることもできる。

ロシアは手持ちの核兵器をこれからも整理していくかもしれないが,自国の天然ウラン生産が低迷していることを考えると,まず,自国での消費に振り向けるだろうから、取り出した高濃縮ウランが国際市場には出てこないと見るのが妥当だろう。

こうした供給の逼迫については,資源エネルギー庁も「世界のウラン資源需給の展望と我が国の対応」という2005年の第4回原子力部会の資料でも言及している。その資料が懸念したように、鉱山から新たに掘り出されり天然ウランの量はほとんど横ばいである。

(2005年資源エネルギー庁、第4回原子力部会資料より)


出典】世界原子力協会, The Global Nuclear Fuel Market(2003)、原子力委員会新計画策定会議第5回資料第3号


ただし、この資料の結論は「ウラン燃料安定供給のため、世界的な天然ウランの増産が不可欠」であり、この資料の提言に後押しされるように,日本(企業と政府)は官民一体でカザフスタンのウラン鉱山の開発、検疫獲得に乗り出していったわけだ。それを推進したのが,自民党の原発族の甘利明であり,経産官僚の望月晴文などだ。日本の原発電力会社,原発メーカー,丸紅などの商社もこのカザフにおけるウランの争奪に関わっている(鹿砦社刊『東電・原発おっかけマップ』に詳しい)。こうした「オールジャパン」での取り組みにも関わらず,カザフのウランは原子炉の寿命(30年から40年、最近は60年とも言われる)にも満たない時間で先細りしようとしている。

もし,核弾頭からのさらなる転用がなければ,早ければ2015年頃にはいまよりも2万トン多いウランを鉱山から掘り出されなければならない。そのうち半分はカザフスタン(2015年には2万4000トンに増量の予定)でとりあえずまかなえるかもしれないが,残りはどこからくるのか。原発ラッシュにより需要が拡大していくというのに、天然ウランの生産がそれに見合うようなペースで増えなければ、原子炉はあっても燃料が不足して運転できないというブラックジョークのような状態が出現する可能性もある。

ウラン供給と需要が逼迫してくれば、当然ウランの価格が上昇する。ウランの価格は2011年には50ドル台/1ポンド(約453.6g)U3O8で推移しているが、2000年には10ドル以下だった。2007年6月には136ドルにまで上昇した。

(1980年からのウラン価格の推移)
[世] ウラン価格の推移(年次:1980~2010年)
(出典:http://ecodb.net/pcp/imf_usd_puran.html)

この価格変動の背景にはウランそのものの供給の問題があるほか、ピークオイルのもたらす原油価格の高止まりがある。現在の価格にも、ウラン供給の逼迫を見越した投機マネーの流入が当然あるだろう。IAEAによれば燃料としてのウランの価格が原発の発電コストに占めるのは2割にすぎない。精錬前のウラン価格がたとえ倍になっても原発発電コストへの跳ね返りは6%(OECDの計算では10%)にすぎないと言われている。ちなみに他の燃料源の場合,燃料費が2倍になれば,石炭火力だと発電コストは40%,天然ガス火力なら75%の上昇になる。この数字が正しいにしても,発電コストの上昇はさけられないし、IAEAの計算では考慮されていないが,ピークオイルの文脈で考えれば,発電コストの燃料以外の部分,8割のうち大きな割合を占める運転コスト,発電所や原子炉の建設費は化石燃料の価格に大きく左右される。原発の発電施設や長期に及ぶ使用済み核燃料の安定・維持を原発の「作り出す」エネルギーだけでまかなうことはできない。

2002年には1バレル(159リットル)25ドル前後だった原油価格は2008年には150ドルに迫り,11年半ば現在も100ドル前後で推移している。それを計算に入れると原発発電コストはもっと跳ね上がっていくだろう。

ウランの需要と供給の逼迫,そしてピークオイルが「エネルギー源」であるはずの原発に重くのしかかってくるのはそう遠い先の話ではない。

太陽光発電は万能の救世主か?

脱原発,ピークオイル,環境破壊への対策として「再生可能エネルギー」が大きくもてはやされている。とりわけ太陽光発電への期待が大きい。確かに地球に降り注ぐ太陽エネルギーはものすごい量であり,ハイテクでエネルギー効率の良い社会を維持する、環境にやさしいクリーンな電力源と位置づけられることも多い。

もちろん、太陽光エネルギーなど自然エネルギーをこれまで以上に活用することは原発や化石燃料に頼るよりも「エコ」であり,「持続可能」である場合もある。しかし,ネコもしゃくしも屋根に太陽光パネルを載せればどこでも問題が解決するというような考え方は短絡にすぎるだろう。

現代人は忘れがちだが,自然環境の中からエネルギーを獲得するためには,それはそれぞれの場所によって異なる環境を理解しなければならない。水力発電はどこでもできるわけではない。風力についても適地がある。しかし,太陽光パネルとなると,なぜか,どこでもできるような思い込みをする人が多い。

太陽光発電は「エネルギー負荷がかからない」と思われがちだが、必ずしもそうとは限らないこともある。適材適所,それを理解してかからないと,太陽光発電は百害あって一利無しとなることもある。日が照っているというだけでどこでも太陽光発電に適しているとは限らない。それを理解するためには,まず,太陽光発電装置を作るために投入されたエネルギーを理解し,そして,耐用年数までにどのくらいのエネルギーの量が獲得できるのか,そしてその廃棄にどれほどのエネルギーがかかるのか,まず計算してみることだ。簡単に考えても,まず自分が設置しようとする場所の日射量を知るべきであり,製品の耐用年数をかけてみると、そのパネルが寿命がくるまでに獲得できる電力量がわかる。パネルの製造者は20年とか25年,30年はもつと言うが,劣化を考慮すれば10年、15年で性能はかなり落ちるのではないだろうか。

それぞれの土地の日射量について、ヨーロッパ/アフリカアメリカについてはかなり細かく地域ごとに計算のできるサイトがある。日本についても、そういうサイトがあれば適材適所を考える上で,最も基本となる日射量を数値として把握できるのだが。まあ、日射量は自分で計測することもできるが,大体のところはNEDOのデータが参考になる。これによれば、日本の都道府県庁所在地で一番日射量が多いのは高知、甲府,広島,宮崎の順になるそうだ。大体1日に1平方メートルあたり4kwhだそうだ(元データであるNEDOのデータがうちのピュータでは読み取れないので、これが天候を考慮した年平均値なのか,それとも晴れの日だけのデータなのか不明)。ただしこの数値は最適な角度に設置した場合のデータであり、実際はこれよりもかなり低くなるだろう。



これを日射量の世界地図で比べるとヨーロッパやアメリカのほとんどの場所よりも状況は良さそうだが,太陽光発電を考える場合,忘れてはならないのは発電装置を作るために大量のエネルギーの初期投資が行われていることだ。太陽光発電は大きなエネルギー的借金を抱え,マイナスからスタートする。稼働過程(発電の過程)でほかのエネルギーの投入がいらず、温暖化ガスを発生させないということだけで判断してはならない。

再生可能なエネルギー源を収穫し、貯蔵し、利用するには、きわめて高品質の様々なエネルギー(大半は非再生可能なエネルギー)を投入しなければならない。太陽光を電力に変換して出力する発電機にはいくつかのタイプがあるが、それぞれの部品は空から降ってくるわけではない。人間が製造しなければならない。それには当然エネルギーの初期投資が必要になる。最も一般的なシリコン太陽電池の場合,原料となる珪石(珪砂、シリカとも呼ばれる)を採掘し、不純物を取り除き,発電に使える形にするために膨大なエネルギーがかかる。シリコンの原料は国内に2億トンの埋蔵があると言われているが,現在は金属シリコンの状態で輸入するのが一般的だ。なぜか。それは酸化物を還元するために膨大な電力が必要になるからだ。だから、電力の比較的安い場所がシリコンの供給先になっている。太陽光パネルの部品はシリコンだけではない。パネルの枠組みには軽量でさびにくいアルミの使われることが多いが,アルミは電力を大量に必要とする。太陽光パネルはシリコンやアルミの製造過程でエネルギーが投入されるだけでなく,大気汚染,重金属汚染を引き起こし,温暖化ガスを多量に排出しているので、決して人畜無害な製品ではない。エネルギーの初期投資を下げ、環境負荷を減らすためには,太陽光発電システムの製造を太陽光エネルギーだけでまかなうことだ。

太陽光パネルにどれだけのエネルギーが初期投資されているのかについてはいくつか研究があり,たいていの場所では2、3年すれば、投入されたのに見合うだけの発電ができるだろうという楽観的なものもあれば、エネルギー的に見合うのは耐用年数ぎりぎりだろうというものもある。これらの研究のなかには,廃棄のエネルギーコストまで計算したものもあるにはあるが,たいていのものから見落とされているのは人的資源にかかるエネルギーだ。

目に見える形,商品化されたエネルギーだけが初期投資ではない。太陽光発電の装置は人間が作り出すものであり,「技術革新」にはエネルギーが大量に投入された教育や訓練が必要になる。高度な「技術」は一朝一夕に無から生み出されるわけではない。最終的なパネルの効率は「技術革新」や「研究開発」のおかげでよくなっていくかもしれないが,その効率を生み出す「技術革新」や「研究開発」にはより大量のエネルギーを使わなければならない。「技術」にはエネルギーが凝縮されている。太陽光パネルは膨大なエネルギー投資が行われてきた結果であることも留意しておかなければならない。

そして,それだけのエネルギーを「技術革新」に投入しながらもえられる効率はどれほどのものか、というとどうやらたいしたことはなさそうだ。

『Environmental Accounting(環境収支学)』の中で,パーマカルチャーにエネルギー的な支柱も提供したハワード・オーダム(オダムという表記もあり)は次のように結論している。

「太陽光発電の研究や生産が進むにつれ、太陽光発電装置の製造に必要なモノやサービスの量は年々少しずつ低下してきている。単位電力当たりのコストも、緩やかではあるが低下してきている。しかし、太陽光発電の効率改善が熱力学的段階まで進んだとしても、自然の太陽光発電装置である葉緑体の効率性の足下に及ぶかどうか、という程度のものである。生物物理学の研究によると、効率性を表す曲線を光の強度の関数として描いた場合、葉緑素単体のほうが太陽光発電よりも効率がよいことが分かっている。植物の光合成で行われる太陽光のエネルギー変換は、十億年にわたる自然の選択過程を経て、すでに最高のエメルギー収支を達成していると考えられる」

オーダムが指摘するように,「技術革新」が進んでも植物がこれまでに太陽エネルギーを取り込むため進化してきた効率の足下にも及ばないのだ。植物を含め生命体は,太陽エネルギーの恩恵を何十億年にわたり、主要なエネルギー源としてきた。そして、それを最大限に獲得し利用するための進化を遂げ、最適な形態にたどり着いているのではないだろうか。たかが,人間の「科学技術」がこの効率の良さに迫れるかといえば,はなはだ疑問である。

「再生可能エネルギー」の獲得や貯蔵は利用する場所で何が手に入るのか,まず、それを見極めなければならない。あらかじめ用意した答えをふさわしくない環境に無理矢理押しつけるような態度は人間の思い上がりのエゴであり,「環境にやさしく」もなければ、「エコ」でもない。太陽光発電は決して環境負荷のない技術ではない。それどころか、そぐわない場所では自己満足だけに終わり,実は害を及ぼすこともある。何かをすることで気持ちはよくなるかもしれないが,時には何もしない勇気が必要だ。まずは周囲の環境を観察し、自分の暮らしをエネルギー的に精査することだ。

Wednesday, August 24, 2011

はるみにとって都合のよくない事実

『東電・原発おっかけマップ』(鹿砦社)から、泊3号の営業運転を許可した北海道知事にとって,あんまり都合のよくない事実を記載した部分と,北電の幹部について住所を転載。

電力会社からの献金は国政の場だけでなく、地方政治にも及んでいる。組織的な「個人献金」というまったく同じ手法がとられているところもある。たとえば泊原発を抱える北海道では、元通産官僚の高橋はるみ知事の政治資金団体「萌春会」に北海道電力の役員が毎年一斉に「個人献金」を行っている。やはり元経産官僚(望月晴文と同期入省)で一一年四月の選挙で福岡県知事に当選した小川洋の後援会代表を買って出たのは九州電力会長で、九州経済連合会長の松尾新吾だ。小川の前任者でやはり経産官僚の麻生渡前知事の政治団体には九電の役員が「個人献金」を続けてきた。そして、なかなか再起動できない高速増殖炉のもんじゅを抱える福井県では、西川一誠知事や地元の河瀬一治敦賀市長に、もんじゅの運転者である原子力研究開発機構の下請け三社からパーティ券の購入を通し、カネが流れている。
原発の立地、運転停止や再開,プルサーマルの受け入れをめぐっては知事が大きな力を振るう。電力会社や原発企業から流れるカネに感電し、ぶるぶるとしびれ切った頭で、はたして真っ当な判断ができるのだろうか。政界の原発汚染は高レベルで広範囲にわたっていて、集中処理施設がいくつあってもおいつかない。



国民政治協会への「個人」献金(07~09年度合計)
役職 献金額(万円) 住所
北海道電力 近藤龍夫 会長 75 札幌市中央区南十六条西7ー1ー7−503号
佐藤佳孝 社長 60 札幌市中央区南二十条西9−1−23−601号
大内全 副社長 40 札幌市清田区清田六条4−10−23
川合克彦 副社長 30 札幌市清田区平岡八条3−4−17
山田範保 常務 30 札幌市中央区南一条東6−1−10アジリア札幌大通東1305
その他7人 191
北海道電力合計 426

もひとつおまけにもっと徹底調査をしたサイト「通産出身の道知事、泊原発運転を容認のワケ 北海道電力役員からの一斉献金、計371万円也」もぜひご参照を。

地球にやさしい生活(という映画を観た感想)

今年後半(?)に日本で公開されるアメリカ映画「地球にやさしい生活」を観た感想。
予告編

邦題がとにかください(原題は「no impact man」)。配給会社のセンスを疑ってしまう。タイトルだけなら,絶対に観に行かない。dvdも(なにがしかの関係で机の上に載っていなければ)観ない。とにかください。題名の字体もださい。でも,行きがかり上観ちゃったんで,感想をメモ。しとく。

内容について。
ニューヨーク在住の一家(30代後半〜40代のカップル、プラスおしめをする年代の子供一人)が地球に負荷をかけない暮らしにがむしゃらに一年間突入。電気を使わず(ガスは使っているみたい),トイレットペーパーを使わず,コーヒーも飲まず、地下鉄も利用せずってな暮らしを期間限定(1年間)で実験するドキュメンタリー。

この映画ではあまり深く立ち入らないが,「やさしい生活」っていうと都市対田舎っていう軸で語られることが多い。特に日本ではそうだ。しかし,都市でもできることはたくさんある。また,都会暮らしの方が多分,負荷は田舎暮らしの方より少ないかもしれない。「自給自足」っていうとき,「自給(生産)」にばっかり目がいきがちで,「自足(消費)」の部分がおろそかになりがち。がむしゃらに生産するより,消費を減らす方がずっと簡単に負荷を減らすことができる。

都会暮らしの方が公共交通が発達し、公共施設が充実しているという利点もある。田舎なら,何でも自分たちで全部やらなければならないことも,都市ならば共有することができる。そういうところにこの映画は立ち入らない。

もうひとつの不満は,何かひとつやるとしたら何がいいかかと問われ,「環境団体にボラとして参加することだ」というコメントだ。この映画の最大の弱さだろう。他人に暮らしの変化を求めることは難しいが,自分の生活は自分で変えられる。自発的な行動の強さを矮小化するコメントだと思う。他人(地域社会,企業,政府)を変えるのは大変だけど,自らの生活、癖,習慣はずっと簡単に変えることができるものだ。

もうひとつ,この映画の弱点はどこかでうまく使える道具を持ち込むことで解決を図ろうとすること。他人のうちでうまくいっているものは、どこでも使えるだろうという思い込みが現代人にはある。電気の来ているところでは使える(電気)炊飯器も電気のないところでは全く役に立たない。乾いた環境ではうまくいく建築方法も湿った環境にはそぐわない。熱帯では寒帯で役に立つ知恵も機能しない。風の強いところでは使える方法も,風のないところでは使えない。一見当たり前のようなことだが,現代人はそれを忘れてしまっている。自然とうまく折り合いを付けようとするなら,そういった根本的な原理を思い出す必要がある。電気冷蔵庫を「非電化冷蔵庫」で置き換えるなどという小手先のごまかしじゃ,だめだ。

もし,自分が何かひとつやるとしたら何がいいかかと問われたら,なんと答えるか。まず,自分の暮らしの家計簿をつけることだ。一週間でかまわない。自分がどれだけのエネルギー(電気、ガス、ガソリン,水,食料,移動手段、情報など)を使っているのか,帳簿をつける。それら、自分の生活を支えているエネルギーがどこから来ているのか,たどる。そうすれば,地球環境に与えている負荷が見えてくる。それがわかったら,減らすものも見えてくる。そして,自分のいる環境を地図にすることだ。自分の生存に必要なエネルギー(電気、ガス,ガソリン、水,食料、移動手段、情報など)はどこからどのようにして自分のとこまでたどり着くのか。それを視覚化することだ。それがわかれば,冬のニューヨーク(や東京)なら,電気冷蔵庫は(多分)必要ないことがわかるだろう。
行動は,一番大きなものから取りかかるのがベストだ。やみくもになんでもかんでもただゼロにしようとすれば,ただ苦しいだけで行き詰まってしまう。気持ちよくやるためには,まず,観察,そして監査、そして行動だ。

リビア(3)


(リビアの原油生産)

反カダフィ勢力がリビアの首都トリポリを制圧したというニュースが流れているが、まだ情勢は流動的なようだ。ボリビアのチャベス大統領が指摘するように,Nato軍のリビア空爆は石油狙いに間違いない。

内戦以前,リビアの原油生産(日産160〜180万バレル)は世界全体(8800万バレル)の2%程度を占めていた。量としてはたいしたことはないが,ボリビアのオリノコ原油やカナダのタールサンドなどとは比較にならないくらい質がいい。精製に手間のかからない「軽くて甘い」アブラで、イタリアを中心にヨーロッパに輸出されていた。これが内戦開始からほとんど出回らなくなってしまった。ヨーロッパ(Nato)が他の国や地域には目をつぶっても、リビアに積極的に介入したのはこういう事情がある。


(サウジアラビアの原油生産。二つのグラフはスチュワート・スタニフォードのearlywarn.blogspot.comより転載)

リビアの政情が不安になってから,サウジアラビアは不足分を補う増産をすると繰り返し発言した。サウジの原油生産は確かに増えはしたが、その量はリビア分を補うほどではない。また、サウジの増産したアブラの質はわからない。

これからどうなるか。リビアに反カダフィ勢力の政権が樹立されるにしても,原油生産が内戦開始以前のレベルまで回復するには相当長い時間がかかるだろうことは間違いない。水道の蛇口を開け閉めするようにはいかない。破壊されたインフラ,技術者の不足など問題が山積みされている。

リビア(2)でも書いたように
1979年のイラン革命では同国の生産の半分以上が止まり、現在に至るまで完全には回復していない。1990年のイラクによるクウェート侵攻では両国の生 産量は数年間にわたり減少、クウェートの油井は荒廃した。2002年のベネズエラの石油産業の大規模ストライキでも生産は滞り、ストライキ以前の水準には 戻っていない。

下のグラフはイランとイラクの例だ。





(この二つのグラフはデイブ・サマーズのbittooth.blogspot.com/より転載)

この二つのグラフからもわかるようにイランとイラクのアブラの生産のレベルはそれぞれの国で政情不安があったあと,何年もたつというのにそれ以前のレベルまで回復していない。リビアの原油生産が数週間とか,数ヶ月で回復するだろうという楽観的な見方をする石油会社や政府もあるが,イランとイラクなどの例を見れば,もっと時間がかかるだろうと見る方が現実的だ。

リビアについて今年はじめにも書いたように,せいぜい2%のアブラが世界経済を不安定にならしめるほど、アブラの需給は逼迫している(そういう状況だからこそ,その程度の量なのにヨーロッパはひっちゃきにしゃかりきになるのだ)。
リビアの政治体制がどうなるにせよ、その状態はしばらくは変わらない。サウジなどの増産が間に合わなければ,経済は持ち直す前に悪化するだろう。


リビア(1)

リビア(2)

Thursday, July 21, 2011

原発ルネッサンス応援団

『東電・原発おっかけマップ』(鹿砦社)がぼちぼち出版されるそうです。いくつか、本の中身を転載したところ、未曾有の原発事故を起こしたとはいえ、住所などを公開するのはどうか、という批判があるそうです。

しかし、これらの情報はこの本が出る前にすでに公開された情報です。たとえば、電力会社の役員の住所は、この本にも書かれているように、総務省の政治資金収支報告書からの引用です。見ようと思えば、誰でも見つけることができます。

最後にもう一つだけ、『おっかけマップ』から転載します。この記事の内容も、すでに公開されている情報であることを付け加えておきます。

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官民一体のオールジャパンで原発市場に食い込むことが日本経済の成長戦略に とって欠かせない、そのために必要な国内体制を整える目的で産業界、有識者、専門家を集めて設立された「シンクタンク」がある。フクシマのひと月前に立ち上げられた「原子力ルネッサンス懇談会」だ。会長は東大総長を務めた有馬朗人元文科大臣。座長が今井敬(元新日鐵社長・第9代経団連会長)、そして「原子力立国」の望月晴文が座長代理。メンバーを眺めると、日本経済の原発汚染度がよくわかる。フクシマ後にはさすがに強烈すぎると思ったのか、4月22日の2回目の会合で「エネルギー・原子力政策懇談会」と当たり障りのない名前に早々と改名している。

<メンバー>

勝俣 恒久 ・ 東京電力会長
張 富士夫 ・ トヨタ自動車会長
三村 明夫 ・ 新日本製鐵会長
中村 邦夫 ・ パナソニック会長
長谷川閑史 ・ 武田薬品工業社長       
佐藤 育男 ・ 日本製鋼所社長
渡辺 博史 ・ (株)日本政策金融公庫 ・ 国際協力銀行経営責任者
槍田 松瑩 ・ 日本貿易会会長(三井物産会長)
小林 栄三 ・ 伊藤忠商事会長
勝俣 宣夫 ・ 丸紅会長
川井 吉彦 ・ 日本原燃社長
北村 雅良 ・ J-POWER社長
森本 浩志 ・ 日本原子力発電社長
老川 祥一 ・ 讀賣新聞東京本社社長
島田 昌幸 ・ テレビ東京社長
日枝  久 ・ フジテレビ会長
武黒 一郎 ・ 国際原子力開発(株)社長
近藤 龍夫 ・ 北海道電力会長
高橋 宏明 ・ 東北電力会長
阪口 正敏 ・ 中部電力副社長
永原 功  ・ 北陸電力会長
森  詳介 ・ 関西電力会長
福田 督  ・ 中国電力会長
常盤 百樹 ・ 四国電力会長
松尾 新吾 ・ 九州電力会長
西田 厚聰 ・ 東芝会長
川村 隆  ・ 日立製作所会長
佃  和夫 ・ 三菱重工業会長
尾池 和夫 ・ 国際高等研究所所長(前京大総長)
茅  陽一 ・ 地球環境産業技術研究機構副理事長
児嶋 眞平 ・ 京大名誉教授(前福井大学学長)
白井 克彦 ・ 前早稲田大学総長
中西 友子 ・ 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
濱田 純一 ・ 東京大学総長
武藤 敏郎 ・ 大和総研理事長
和気 洋子 ・ 慶応大学教授
総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会長
岡崎 俊雄 ・ 日本原子力研究開発機構相談役(前理事長)
遠藤 哲也 ・ 元外務省科学技術担当審議官
田中 明彦 ・ 東京大学教授
谷口 富裕 ・ 前IAEA事務次長
月尾 嘉男 ・ 東京大学名誉教授
豊田 正和 ・ 日本エネルギー経済研究所理事長
山路 亨  ・ 原子力発電環境整備機構理事長
竹田 敏一 ・ 福井大学国際原子力工学研究所所長       
田中 知  ・ 東京大学大学院工学系研究科国際原子力専攻教授
藤井 靖彦 ・ 東京工業大学原子炉工学研究所名誉教授


ちなみにこの懇談会のウエッブサイトを管理するのは「ネットジャーナリスト協会」というこれまた当たり障りのない名前を持つ団体。内幸町のプレスセンターに事務所があるそうだ。どんな「ジャーナリスト」が所属しているのか分からないが、前東芝会長の岡村正が理事長で、理事には元財務大臣の塩川清十郎(自民党の政治資金団体、国民政治協会の代表)、新日鉄会長の三村明夫、パナソニック会長の中村邦夫、フジテレビの会長日枝久、そして東電会長の勝俣恒久などそうそうたる顔ぶれが並ぶ「NPO」組織だ。一体全体、この人たちの標榜する「ジャーナリズム」ってのはどんなものなのだろうか。
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Sunday, July 17, 2011

甘い関係

『おっかけマップ』より転載。
こういう内容満載の本なので,ぜひ,書店で注文して購入してください。
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経産省が5月2日にまとめた報告によれば、前身の通産省や商工省も含め、これまでの50年間に68人のOBが監督官庁から電力会社に再就職、驚く早 さで常務や副社長に昇格してきた。天下りの内訳は、北陸電力6人、中部電力5人、関電8人、中国電力3人、四国電力 4人、九州電力7人、沖縄電力に4人。発電だけの日本原子力発電に8人、電源開発6人。
最終官職だけを見ると分かりにくいが、資源エネルギー庁で仕事をした経験を持つ原発官僚が電力関連企業に"再就職"の場を求めるのが目立つ。エネ庁上がりの人間が電力会社にとっても使い出があるようだ。
下記のリストは68人の「下界に下りてきた人々」の中からエネ庁関係者、最近の人を抜粋した。
北海道電力(5人)
●山田範保
退官前の主な役職:環境省大臣官房審議官→経産省大臣官房付
入社/退社:2005年 7月→2011年6月 
社内の役職:理事→常務
2009年度国民政治協会への献金額:7万円
住所:札幌市中央区南一条東6−1−10アジリア札幌大通東1305

●村田文男
退官前の主な役職:資源エネルギー庁石炭部長
入社/退社:1986年 10月→1997年6月 
社内の役職:企画室調査役→燃料部長→常務→副社長

東北電力(7人)
●西村雅夫
退官前の主な役職:資源エネルギー庁海外炭対策室長→大臣官房付(中小企業庁次長)
入社/退社:2009年 7月→現職
社内の役職:顧問

●松田泰
退官前の主な役職:資源エネルギー庁長官官房審議官
入社/退社:1987年 6月→1998年3月 
社内の役職:顧問→常務→副社長→顧問

下北に建設されるウラン濃縮工場、再処理工場、使用済み燃料貯蔵施設の建設をどう進めていくか国会のエネルギー対策特別委員会で問われ、こう答えている(1984年)。
「こ れを行います事業者が地元と接触するわけでございますので、事業者の方で十分な説明ができるように我々も指導してまいることはもちろんでございますが、 政府みずからも地元関係者の間で必要な手続その他につきまして今後検討を進めてまいりたいと思いますし、あるいは予算その他の政策におきまして、PR関係 の地元に対します補助、あるいは関係団体に対します委託といったような手段を使いまして、広報関係の努力も続けていきたい」

東電(5人)
●石田徹
退官前の主な役職:資源エネルギー庁長官
入社/退社:2011年1月→4月
社内の役職:顧問

石田は30年までに少なくとも14基の原発の新設、稼働率を90%に高めることを盛り込む「エネルギー基本計画」を2010年に発表。

●白川進
退官前の主な役職:資源エネルギー庁公益事業部長、同省基礎産業局長
入社/退社:1999年10月→2010年 6月
社内の役職:顧問→取締役→常務→副社長
2009年度国民政治協会への献金額:24万円
住所:新宿区西早稲田2−1−23−206

●川崎弘
退官前の主な役職:資源エネルギー庁次長、経済企画審議官
入社/退社:1990年12月→99年 6月
社内の役職:顧問→常務→副社長→最高顧問→顧問

●増田実
退官前の主な役職:資源エネルギー庁長官、通産審議官(省内では事務次官に次ぐポスト)
入社/退社:1980年 5月→89年 6月
社内の役職:顧問→常務→副社長→相談役

●石原武夫
退官前の主な役職:特許庁長官、通産事務次官
入社/退社:1962年 5月→81年 6月 
社内の役職:取締役→常務→副社長→常任監査役→相談役

官僚時代に原子力局をつくれ」と主張し、「原子力行政のまとめ役」といわれた人物で東電の「指定席」への天下りの走り。

北陸電力(6人)
●荒井行雄
退官前の主な役職:資源エネルギー庁公益事業部原子力発電安全管理課長→国土庁長官官房審議官
入社/退社:2006年4月→現職
社内の役職:顧問→執行役員→ 常務
2009年度国民政治協会への献金額:15万円
住所:富山市今泉32−5プルミエールU404号

1991 年、当時公益事業部発電課長だった佐々木宜彦(後に初代保安院院長)などとともに参議院の科学技術特別委員会で質問に答えている。美浜2号 の細管破断事故について問われた荒井は大臣ですら「事故は事故」と認めたあとでも再三にわたり、「事象」と言い張って譲らなかった。


●上村雅一
退官前の主な役職:資源エネルギー庁公益事業部原子力発電課長→大臣官房付
入社/退社:1995年 3月→2003年 6月 
社内の役職:常勤顧問→取締役→常務

●高橋浩
退官前の主な役職:資源エネルギー庁公益事業部原子力発電課長→大臣官房付
入社/退社:1985年 6月→1995年 3月 
社内の役職:常勤顧問→常務→副社長→常勤顧問


中部電力(5人)
●小川秀樹
退官前の主な役職:経産省中部経済産業局長→大臣官房付(防衛省防衛参事官、背広組ナンバ−2)
入社/退社:2010年10月→現職
社内の役職:顧問

●水谷四郎
退官前の主な役職:経産省生活産業局長
入社/退社:2000年7月→現職
社内の役職:支配人→取締役→常務→副社長→顧問
2009年度国民政治協会への献金額:10万円
住所:横浜市港北区篠原東3−8−7


関西電力(8人)
●迎陽一
退官前の主な役職:資源エネルギー庁電力・ガス事業部長→大臣官房商務流通審議官
入社/退社:2008年8月→現職
社内の役職:顧問→常務

2002年に発覚した東電の「データ改ざんトラブル隠し」にも関わらず、福島や青森に「核燃サイクル事業を進める方針は揺るがない」とプルサーマルを強引に押し付けた人。
2003年の経済産業委員会で電力自由化について。
「今 般の制度改革では、優先給電指令でございますとか、こういった制度を整備することによりまして、原子力ですとか水力といった大規模な、長期安定的な電源 というのの稼働の環境を整えていくというふうなことも措置をいたしておりますので、これによって、CO2を排出をいたしません原子力、水力というふうなも のの運転というのも、新たな建設ですとかの投資環境の整備というのも行われるというふうなことで考えております。」

03年の経済産業委員会で民営化された電源開発への天下りについて。
「いわゆる天下りについて国民の批判というのがあることを真摯に受けとめまして、仮に公務員出身者が役員に就任をするというような状況が生じる場合には、国家公務員法上の厳格な定めのもとに対処をしていくということが必要」

●岩田満泰
退官前の主な役職:資源エネルギー庁石油部備蓄課長→近畿通産局長→通産大臣官房商務流通審議官→中小企業庁長官
入社/退社:2003年10月→2009年6月
社内の役職:顧問→常務→副社長
(2008年度国民政治協会への献金額:20万円)
住所:豊中市新千里南町3−2−2−503

●長田英機
退官前の主な役職:資源エネルギー庁長官官房原子力産業課長→資源エネルギー庁石炭部長→中小企業庁長官
入社/退社:1996年8月→2003年6月
社内の役職:顧問→取締役→常務→副社長

●柴田益男
退官前の主な役職:資源エネルギー庁長官
入社/退社:1988年4月→1997年6月
社内の役職:顧問→専務取締役→副社長

オーストラリアにおけるウラン資源の開発を目的に1980年に作られた日豪ウラン資源開発株式会社の代表でもあった。この会社の株主は関電(50%)、九電(25%)、四電(15%)、伊藤忠商事(10%)。

中国電力(3人)
●末廣恵雄
退官前の主な役職:資源エネルギー庁公益事業部原子力発電安全審査課長→資源エネルギー庁公益事業部技術課長→資源エネルギー庁官房審議官
入社/退社:1995年6月→2009年6月
社内の役職:理事→取締役→常務→副社長
(2008年度国民政治協会への献金額:33万円)
住所:広島市西区観音町1−30−601


安全審査課長時代の1984年、決算委員会で、新設される島根2号に適用された耐震指針を用いてそれよりも古い島根1号の安全審査をするべきではないかと質問され、中国電力を擁護する発言をした。

四国電力(4人)
●中村進
退官前の主な役職:資源エネルギー庁公益事業部原子力発電安全管理課原子力発電運転管理室長→公益事業部電力技術課長→保安院主席統括安全審査官
入社/退社:2008年4月→現職
社内の役職:上席支配人→取締役→常務
2009年度国民政治協会への献金額:10万円
住所:川崎市麻生区王禅寺西1−7−16

中村は02年の「東電のデータ改ざん、事故隠し」当時、保安院の主席統括安全審査官。

●落田実
退官前の主な役職:資源エネルギー庁石油部流通課長→工業技術院総務部技術審議官
入社/退社:1995年6月→2002年6月
社内の役職:取締役→常務

02年、四国電力の情報通信子会社STNet社長に転出。


九州電力(7人)
●掛林誠
退官前の主な役職:資源エネルギー庁 企画調査課長→大臣官房参事官→通商政策局通商交渉官
入社/退社:2008年9月→現職
社内の役職:顧問→海外事業部長→執行役員


●横江信義
退官前の主な役職:資源エネルギー庁公益事業部原子力発電課長→大臣官房審議官(地球環境問題担当) 
入社/退社:1998年8月→2008年6月
社内の役職:顧問→理事事業開発部長→執行役員→事業開発本部長→常務

沖縄電力(4人)
●遠藤正利
退官前の主な役職:資源エネルギー庁官房海洋室長→北海道通商産業局総務企画部長→大臣官房付
入社/退社:2007年6月→現職
社内の役職:理事→取締役→常務

●久慈偉夫
退官前の主な役職:資源エネルギー庁原子力産業立地企画官
入社/退社:1988年7月→1997年6月
社内の役職:理事→取締役→常務


日本原子力発電(8人)
●小島康壽
退官前の主な役職:防衛庁防衛参事官→産業技術環境局長
入社/退社:2009年10月→現職
社内の役職:顧問→取締役

●向準一郎
退官前の主な役職:資源エネルギー庁長官官房審議官
入社/退社:1993年6月→2002年2月
社内の役職:常務→副社長→顧問

1988年外務委員会での答弁。
「安 全審査の中で災害安全評価ということで、万が一事故が起こった場合にどういうような周辺環境に影響があるかというような評価もやっております。そういう ことで、多重防護という考え方でいろんなシステム、最後には格納容器という設備まで置きまして、周辺環境に放射能が漏れないようにというような災害評価の 中でも多重防護の考え方を使いましていろんな設備を多重につけるということで、我々といたしましては平常運転はもちろんでございますし、そういうようなト ラブル等が起こりましても、そういう周辺公衆が影響を受けるような災害につながるということはないというふうに考えておりますし、そういうふうに我々安全 規制を進めている」
「我が国の原子力発電所の安全性には問題はない」
「チェルノブイリの事故につきましては、原子炉のその 不安定な特性を持っているとかそういうような設計上の問題、あるいは運転上いろいろ規則違反をしたとい うようなことで特殊実験を強行したために起こったものでありまして、我が国では起こり得ないものというふうに承知している」

電源開発(6人)

●藤冨正晴
退官前の主な役職:資源エネルギー庁長官官房審議官→保安院審議官
入社/退社:2006年6月ーーーーー2011年6月
社内の役職:取締役→常務

青森県でもっぱらMOX燃料を使う大間原発を建設中の電源開発。
藤 冨は資源エネルギー庁長官官房審議官時代の2000年、参議院経済 産業委員会で放射性廃棄物の最終処分に関する法律に関する審議で加納時男の質問に答え、「高レベル放射性廃棄物の年間の発生量は概算で、(中略)約四 百六十トンございまして、これを国民一人当たりに換算しますと約四グラムである。産業廃棄物の約百万分の一」と説明。質を無視して量だけで比較しようとす る加納の乱暴さにはあきれるが、答える方の藤冨もずさん。
上関原発をめぐる第一次公開ヒアリング(2000年10月)には東北電力に天下る西村雅夫(当時、公益事業部計画課長)とともにエネ庁を代表する議長団として参加。
2002年の東電不正問題を調査する保安院の委員会メンバー。

米倉弘昌:財界の原発チアリーダー

経団連会長の米倉弘昌について,『おっかけマップ』から転載します。なぜ,この本が取り次ぎ拒否になるのか。うーん。わからない。

「千年に一度の津波に耐えているのは素晴らしいこと。原子力行政はもっと胸を張るべきだ」。「財界総理」である経団連会長、米倉弘昌の発言だ。それも七七万テラベクレルもの放射性物質がじゃじゃ漏れの三月一六日の発言だ。
国会と違い、この「総理」は国民に何の責任も負わないとはいえ、無責任な発言ばかりが続く。同じ会見では「原子力行政が曲がり角に来ているとは思っていない」と早々と原発推進を鮮明にした。この時期、自民党の谷垣は「原発政策の見直し」を口にしている(後に撤回)だけに、そのぶれのなさは鮮明だ。
四月には原発は「国によって安全基準が定められ、設計され建設されている。東電が甘いのではなく、国が設定する安全基準が甘かった」と東電を大援護。賠償問題についても「原子力損害賠償法には、大規模な天災や内乱による事故の場合には国が補償するとある」と言って国が全面的に賠償することを要求した。
原発のチアリーダーとしての揺るぎない態度は五月になっても変わらず、政府が浜岡原発の停止を要請すると、それを「唐突だ」と批判する。

米倉が一〇年から会長を務める経団連(日本経済団体連合会)は、日本を代表する企業の経営者の集まりで、〇二年には旧経団連(一九四六年発足)と日経連(同一九四八年)が統合され、さらに力を増している。しかも経団連の地方組織ともいえる各地の経済連合会で、電力会社が占める役割は生半可ではない。

▼経済連合会の現職会長(一一年六月現在)
北海道:近藤龍夫(北海道電力会長)
東北:高橋宏明(東北電力会長)
中部:川口文夫(中部電力相談役)
北陸:新木富士雄(北陸電力会長)
関西:森 詳介(関西電力会長)
四国:常盤百樹(四国電力社長)
九州:松尾新吾(九州電力会長)
このように地方の経済連合会の現職会長は、全員電力会社のトップで占められている。日本全国の団体である経団連ではそれほど露骨には出てこないが、地方の経済連の会長職は、電力会社の会長か社長が就くのが慣例なのである。
東電に対応するのは全国組織の経団連だが、平岩外四が旧経団連の会長(九〇年から九四年)を務めたほかには東電から「財界総理」は出ていない。しかし、直接トップに立たなくても米倉のような有能なチアリーダーがいれば、その必要もない。ちなみに四八年から五六年まで、経団連の初代会長を務めた石川一郎(日産化学工業社長)は湯川秀樹、茅誠司、藤岡由夫、有沢広巳とともに、五六年に設立された最初の原子力委員会の委員だった。
この米倉、原発を応援するのは経団連の会長だけだからではない。住友化学はGEともに放射性医薬品を扱う会社、日本メジフィジックスの親会社だ。日本メジフィジックスは一〇年にセシウムの体内除去剤「ラディオガルダーゼ」をドイツから輸入する許可を受け、フクシマ後に緊急輸入、福島県などで配っている。同社には厚生省からプルトニウム除去材の開発の依頼もきているそうだ。
過激なまでの原発推進、東電擁護の発言ばかり聞いていると、米倉が被曝ビジネスのタネだから、原発の旗ふりをしているんじゃないかなんて気にもなってしまう。

Friday, July 15, 2011

東電役員のリスト

鹿砦社によると『東電・原発おっかけマップ』の見本が出来上がったそうです。しかし、「さっそく取次に見本出ししましたが、日販、中央社が委託配本拒否です。トーハンも、窓口では拒否の感触だったとのことです(連休明けに結論)。書店からの注文は受けるということですので、これから注文を集めないといけません」とのこと。
まあ、こう言うこともありえるかなとは思ってましたが,これほどあからさまとは。ちょっとびっくり。

なので、「数多出た原発本のどれよりもラジカルで,内容も密であることに絶対の自信と自負を持つ」本を読みたい人はご近所の本屋で注文してください。取り次ぎを拒否する本から、今話題の東京電力の主要役員の住所,並びに〇七年から〇九年まで自民党に行った「個人」献金の額を転載(役職は当時)。

さあどうする?怒りのファンレターを送るか,放射能まみれの牛肉や野菜,茶を歳暮に送るか?精神的、肉体的被害を請求するか。これらの人間が枕を高くして寝るべきではない理由を暴露する本を手にするかどうか,選択はあなた次第。


名前(役職):住所/献金額       
勝俣恒久(会長):新宿区左門町6/90万円
清水正孝(社長):横浜市神奈川区栗田谷21−1/84万円
皷紀男(副社長):板橋区志村2−16−33ヴィオスガーデン城山122/72万円
武井優(副社長):調布市入間町1−28−45/36万円
藤本孝(副社長):川崎市多摩区南生田6−5−19/72万円
藤原万喜夫(副社長):中野区白鷺2ー13ー4ー503/36万円
武藤栄(副社長):東村山市諏訪町3−3−2/31万円
山崎雅男(副社長):世田谷区等々力6−11−15−503/36万円
木村滋(取締役)(電事連副会長):横浜市緑区三保町2710−295/72万円
西澤俊夫(常務):大田区東雪谷5−31−1−101/31万円
荒木浩(顧問):品川区上大崎2−21−10−202/60万円
南直哉(顧問):川崎市宮前区神木1−7−18/60万円
白川進(顧問):新宿区西早稲田2−1−23−206/72万円
築舘勝利(監査役):国分寺市南町3−26−19/ 72万円
手島康博(理事)(電事連理事):国分寺市南町1−9−3/10万円
武黒一朗(副社長):川崎市麻生区上麻生4−33−1/72万円

自民党への献金はその他22人(124万円)を含め,東電全体で1030万円。

Saturday, July 09, 2011

九電の実力

今話題の九州電力の実力を鹿砦社刊,『東電・原発追っかけマップ』より転載。
いくつか特筆すること。まずは九電の原発依存率が46%というのは人為的な数字であること。その他の発電所をすべて動かせば、原発の比率は26%に過ぎない。とりあえず、26%の節電をすれば、原発をすべて止めても大丈夫。
もうひとつは地熱の割合が高いこと。21万キロワットは国内電力会社で最高。その辺をこれから伸ばして、原発依存を減らしていくことができるのではないか。そんな気がする。


09年度総資産:4兆0542億円
09年度営業利益:997億円

販売電力量:833億9200万kw
水力発電:298万kw
火力発電:1118万kw
地熱/風力:21万kw
原発:526万kw
最大供給可能出力;2002万kw

供給可能総量に占める原発の割合:26%
発電電力総量に占める原発の割合(09年実績):42%

Thursday, July 07, 2011

九電役員のリスト

今話題の九州電力の主要役員の住所,並びに〇七年から〇九年まで自民党に行った個人献金の額を鹿砦社刊,『東電・原発追っかけマップ』より転載。ファンレター送るのもいいし,抗議文を送るのもいい。放射能汚泥や高濃度汚染水を投げるのもいい。なにはともあれ、達観してる場合じゃない。怒れ

名前   役職  献金額(万円)住所
松尾新吾 会長 95 福岡市東区香椎照葉2−3−31
眞部利應 社長 80 福岡県糟屋郡篠栗町大字津波黒110−2ペンタナヒルズ篠栗8号館501号
     (電事連副会長)

日名子泰通 副社長 36 福岡市中央区鳥飼1−3−18−701号
段上守 副社長 39 福岡市中央区梅光園1−1−5−906号
貫正義 副社長 36 筑紫野市美しが丘南4−8−1
深堀慶憲 副社長 24 福岡市中央区桜坂3−12−91−309号
その他11人 208
九州電力合計 518

Friday, July 01, 2011

What's luck got to do with it?

The Chinese character representing ‘fuku’ in the name Fukushima, one of the Japanese regions devastated in the earthquakes on March 11 2011, means luck. ‘Fuku’ in the name Fukui, the most nuclear region of the world with fourteen reactors in western Japan, is the same character. Fuqing, in the Fujian province of China, the host of one of 13 reactors in the country, also begins with the same character as Fukushima and Fukui. Is it just a sheer coincidence that these regions have got so many nukes? Has luck got anything to do with the sheer volume of nuclear facilities in these regions?

Monday, June 27, 2011

3号炉,5階の3号室,そして新三国同盟

原発についていろいろ調べていると3という数字が気になってしまう。

なぜか,プルサーマルが導入されるのは3号炉がほとんど。ふげんやもんじゅは別に,建設中の大間を勘定に入れるとMOX使用の原発は予定も含めて10基。浜岡4号,志賀1号,島根2号は予定中,最初からMOX専用の大間1号はまだ建設中だから、実施中のものは,事故でぶっ飛んだ福島第一をはじめ,伊方、高浜,玄海、すべてが3号基。予定中の泊や女川を勘定に入れると3号炉の占める割合は6割になる。なぜ、MOXと3号基は相性がいいのだろうか。

相性がいいといえば,電力会社のオエライさんたちの住まいにはなぜか5階の3号室が多い。
近藤龍夫(北海道電力会長),加藤博(東北電力副社長),藤原万喜夫(東電副社長),山崎雅男(東電副社長)経産省から天下りの岩田満泰(関電副社長)、この5人,なんと、みんな503号の住人だ。調べた中で次に多いのが501号のふたり,眞部利應(九電社長,電事連副会長)と久米雄二(中部電力専務,電事連専務理事)だから,桁違いに多い。
何か5階の3号室と電力会社のおエラいさんを結ぶ理由があるのだろうか。

もうひとつ,3といえば新三国同盟である。フクシマ後ドイツが脱原発に歩みだし、イタリアの原発再開をめぐる国民投票では,投票者の9割i以上が原発反対の票を投じた。投票率が57%だから,棄権した人を含めても過半数の有権者が反原発を選択したということになる。
原発推進勢力に対する反原発の新三国同盟へ日本が踏み出せない理由は,何かあるのだろうか。
世界も将来の世代も注目している。

Monday, June 13, 2011

怒りを持って立ち上がれ(「東電・原発追っかけマップ」の序文)

7月中旬鹿砦社から出版予定の『東電・原発追っかけマップ』の「はじめに」を転載します。
本書では原発ムラの住人たちの所業が自宅の住所,自宅の写真,自宅への地図とともに明らかにされます。もちろん、小出裕章,高野孟、奥平正、今中哲二、吉岡斉などの識者へのインタビューを通して,原発漬け社会の構造も明らかにされます。



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真の文明は山を荒らさず、川を荒らさず、
村を破らず、人を殺さざるべし
──田中正造

 二〇一一年三月十一日、フクシマを境に、日本は変わった。それまではほとんど耳にすることもなかったシーベルトやベクレルの値に怯え、テラだ京だなんてゼロがいくつあるのか分からない数字に困惑し、それらの数字が表す桁違いなレベルの放射能に生活が翻弄される日々が始まった。
 風は濁り、空気を腹一杯すうこともためらわれてしまう。雨の飛沫一滴にもおびえてしまう。水も野菜も魚もびくびくしながら口にする。土は汚れ、海は犯され、人間は被曝する。百姓は追い立てられ、山ギャルも農ギャルもサーファーも、もはや無邪気に戯れることはない。ガキどもは砂場を追われ、どろんこ遊びもできず、気ままにかけまわる野原はない。
 安全を司るはずの役所も、原発を運転する電力会社も、意思決定をするはずの政府も右往左往するばかりで、何をどうやったらいいのか、皆目見当がつかない。人類は未踏の地に足を踏みいれた。誰も何をどうしたらいいのか、分からない。まるで盲のモルモットかなにかのように、盲のモルモットに手をひかれながら、巨大な象の周りを走り回る。大きな足で押しつぶされる日は避けられない。無邪気な日々は永遠に奪われてしまった。

 地震や津波は天災だ。どれだけ備えようが避けられない。しかし、無邪気な日常を奪ったフクシマは人災だ。人道に対する罪、地球に対する罪、将来の世代に対する罪を犯した人間がいる。
 フクシマのおかげですでにたくさんの家庭が壊され、地域社会も粉々になった。フクシマのおかげでたくさんの人が犠牲になり、これからもおびただしい数の命が失われるだろう。原発による土壌汚染で生産基盤を奪われ自ら命を絶った百姓たち。強制「避難」で生活の場所を奪われ死期を早めた人たち。「計画」停電による交通事故で死んだ人たち。これらもみんなフクシマの犠牲者だ。原発事故の可能性を想像力の外に押しやってきた人間たちの目には、これらの犠牲は見えないだろうし、フクシマがまき散らした放射能でこれから殺されていく命も見えないに違いない。「想定外」などという言葉で言い逃れをする連中は、空虚な言葉を浪費するに違いない。
 本書では、原発、原発社会、原発体制を作り、維持し、拡大してきた人を一人一人紹介する。もちろん、本書で取り上げたの原発ムラ住人は、その氷山の一角に過ぎない。いい加減な「想定」をした連中、それを許した奴ら、手抜き、不注意、怠慢のレベルから意図的に原発と心中したいような連中まで、本書に収録できなかった連中がたくさんいる。原発社会は核分裂の迷宮である。きわめて複雑な技術である原発は、きわめて複雑に司法やメディアも含めた政財官学を取り組み、原発複合体の支配する社会を作り出した。複雑な絡み合いのおかげで、責任の所在はきわめて見えにくい。
 しかし、途方に暮れているヒマはない。原発複合体は、すでにフクシマを過去形で語り、青白い不気味な鎌首をもたげはじめている。たとえば、三月三一日、事故からわずか三週間も経っていないというのに、参議院本会議では、ヨルダンに原発を輸出するための原子力平和利用協定の締結が可決承認された。反対したのは共産党、社民党と糸数慶子(沖縄選出)だけ。原発翼賛体制は健在だ。
 六月になると、原発輸出の動きも再び活発化する。東芝と日立がリトアニア原発に応札した。事故後はじめての応札だ。そうかと思えば、永田町では「地下原発」議員連盟なるものが超党派で結成された。時代遅れの構想が埃をはらって、またぞろ持ち出されてくる。見えないようにすれば、文句も出ないだろうというわけだ。九州では玄海原発の運転が再開されそうだ。「原発なしでは暮らせない日本」というデマ捏造のために、今夏は電力各社が「停電」で危機を煽り、国民を恫喝するだろう。気の遠くなるような年月、面倒を見続けなければならない核のゴミと引き換えにつかの間の繁栄をあれこれ、心配するヒマはない。切羽詰まっているんだから。
 原発社会を動かす連中を糾弾するだけでは原発社会は終わらない。高レベルの放射能をじゃじゃ漏れさせ続ける輩にフクシマの血塗られた汚染土や汚染水を送りつけ、自宅に石を投げつけたところで、それは単なる気休め、憂さ晴らしに過ぎない。それほど、原発汚染は社会の広い範囲に及んでいる。除去装置はいくつあっても足りないし、汚泥を処理する方策もない。
 しかし、それでももっと怒っていい。諦観しなくていい。あきらめなくていい。安っぽい悟りなんか捨てちまえ。こんな生活、普通じゃない。いやだと。 そして、不条理な苦痛を押し付ける連中には、少なくとも社会の一線からお引き取り願おう。そうやって、原発時代のがれきをひとつずつ片付けりゃ、新しい時代の扉が開けるかもしれない。これほどめちゃくちゃな扱いされてるんだから「集団ヒステリー」にでもなった方がよっぽど人間らしい反応じゃないか。あの日以来、強いられている奇妙な生活をやめよう。
 複雑な原発社会の解体は一朝一夕には終わらない。それを構成するねじをひとつひとつ緩め、ばらばらにしていくのは骨の折れる作業になる。原発社会を作るのにかかったのと同じくらい膨大な月日とエネルギーがいるかもしれない。電力ではなくガスを使うとか、水素にするとか、原発電気を代替可能エネルギー電気で置き換えるというような小手先の方策以上の知恵や覚悟がいる。なによりも「成長の呪縛」から自分を開放し、右膝下がりのエネルギー低減時代へ歩みを踏み出すこと、慎ましく、分相応な暮らしへと『未来のシナリオ』を描かなければならない。

 あの日を境に、世界は変わりつつある。ドイツは脱原発に踏み切り、イタリアでは九割を超す人(投票率は五四・八%)が原発のない将来を選んだ。震源地の日本の住民は。フクシマにどうおとしまえをつけるのか。「真の文明」をめざして歩みだすのか、世界は注目している。将来の世代も見ている。

Tuesday, May 03, 2011

放射能は見えないけど(2)

原発は見える。

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5.07 “THINK FUKUSHIMA+WALK” IN KOBE

「原発あかんデモ+被災者支援募金」

・脱原発、原子力発電について考え、声をあげよう!
・被災地の方々に贈る募金活動も行ないます。
・デモ初めてという人こそ気軽に参加してください!
・コスプレ、プラカード、鳴り物歓迎します。

日程:2011年5月7日(土)
時間:14時集合、15時出発~17時
集合場所:東遊園地
予定コース:東遊園地→センター街→元町→メリケンパーク(流れ解散)
主催:”THINK FUKUSHIMA+WALK” IN KOBE 実行委員会

呼びかけ文→http://0507nonukekobe.tumblr.com/post/4743693608/think-fukushima-walk

詳細 : http://0507nonukekobe.tumblr.com/
問い合わせ先 : think.fukushima@gmail.com (横山)
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Tuesday, April 26, 2011

原発暮らしはやめられると大風呂敷をひろげる

原発のない生活を模索する動きが日本全国各地で広がっています。これまでとは違う生き方ができるんだ、原発は止められると大風呂敷を広げてみるだけでもかなり眺めが変わるだろうと思います。
京都の友人がそんなのりで、原発暮らしのどこが人間の暮らしと相容れないのか、簡単な小冊子にまとめてくれました。「天災は止められへん。けど、原発は止められる」というタイトルの小冊子、このくそ重くて込み入った問題を会話形式できわめて軽妙に、しかもよそ行きでない地元の言葉でまとめています。すばらしいです。
福島以後のこの期に及んでも原発なしでは暮らしていけないという依存症の人に、ぜひぜひすすめてください。
「天災は止められへん。けど、原発は止められる」(PDF)。

そして、京都の鴨川べり、ゆったりした大風呂敷な集まりもすてきですね。自分の暮らす場所でも、ぜひ、大風呂敷をやりたくなりました。

Thursday, April 21, 2011

親友の死

とても大切な友人が死んだと聞いた時、とても信ずることができなかった。
80年代の初めから一緒にラジオ番組をつくり、取材に出かけ、本を出版し、原稿を書く。クリケットの試合やフットボールにもよく出かけたものだ。
数年ほどご無沙汰だったがフクシマ以降、まるでそんな空白がなかったかのような勢いで僕らはかつてのように一緒に記事を書き、開幕したばかりのフットボールの話をし、また、一緒に何かやろうかなんて気分になっていたからだった。
葬式はやつの人柄を反影し、シドニーのメディアの連中ばかりでなく、フットボール友達も大勢集まっていた。やつのラジオ番組のカットアップが流れるのを聞きながら、とちゅうで、やつが出てきて、「これは壮大なラジオ芸術プロジェクトだった。みなさんご協力ありがとう」なんていうんじゃないかって、隣の人と話したけど、やつは最後まで出てこなかった。糞やろうめ。

とりあえずはふたりでやりかけた仕事を整理し、発表するものはする。それから先は、やつだったらどうするかなんてことを考えながら生きていくしかない。

トニー・バレルは、福島原発の事故があってから、非常に忙しかったのではなかろうか? それは、70歳(そんな歳には見えなかった)の彼には消耗だったのかもしれない。早い時期にコメントを書いているし、インタヴューにも応えている。この間、わたしは彼の論評を読む機会がなかったが、いまそれを読んでみると、非常に的確なとらえかたをしているのがわかる。リック・タナカとの連名になっている「原子力:答が問題になるとき」という文章では、福島後の問題に関し、日本では反原発の動きが弱いこと、あらゆる部分で(トイレットまで)電化が過剰に進んでいるので、あともどりができないこと、石炭や石油への再依存はますますコスト高になるのでそれも苦しいことを指摘し、日本の今後に懸念を示していた。

粉川哲夫の雑日記より。

Wednesday, April 20, 2011

放射能は見えないけど

原発は見える。

【グリーンピースHPより】
エネルギーシフトパレード
http://www.greenpeace.org/japan/ja/campaign/energy/shift/

バイバイげんぱつ エネルギーシフトパレードに参加して、今こそ、自然エネルギーの未来へ

2011年4月24日(日曜日)
代々木公園から14:00出発


福島第一原子力発電所事故によって、被ばくや放射能汚染に直面されている方々にお見舞い申し上げます。
福島原発周辺だけではなく、私たちをとりまく水や空気はすでに以前のものではありません。
日本は、実は豊かなエネルギーに恵まれた国です。
太陽光、風力、水力、地熱 - 自然エネルギー利用とエネルギー効率を高めることによって、原発に頼らなくても必要なエネルギーをまかなうことは可能です。
政府の「エネルギー基本計画」では震災後の現在でも、2020年までに9基、2030年までに14基の原発の新増設を目指すとしたままです。
ドイツでは、すでに250万世帯が自然エネルギー電気を利用中。
スペインでは、風力が最大の電力源に成長中。
中国は風力の伸び率、世界一。
もう、こんな犠牲を、不安な日々を、二度と繰り返したくない - いまこそ、声をあげ、日本のエネルギーの未来を私たちでつくりませんか。
4月24日、エネルギーシフトパレード(エネパレ)から始まります!!!
エネルギーシフトパレード詳細
•時間:
13:00 ステージアピール(代々木公園野外音楽堂)
14:00 スタート@ケヤキ並木入口(渋谷区役所側)
•ルート:
東京都渋谷区 代々木公園イベント広場~公園通り~ハチ公前~明治通り~表参道~代々木公園原宿口(予定)
ルートマップはこちら >>
•参加方法: 自由参加、自由解散
•内容: ステージアピールの後、サウンドパレード・市民パレード他
•呼びかけ人:
羽仁カンタ(FLAT SPACE )
南兵衛@鈴木幸一(アースガーデン )
佐藤潤一(グリーンピース・ジャパン)
•協力団体: アースデイ東京2011 実行委員会
ぬり絵プラカード
楽しいぬり絵のプラカードをご用意しました。
ぜひ当日お持ち下さい。
ぬり絵エネルギープラカードの作り方例
1.ここをクリックしてぬり絵をダウンロードし、プリントしてください。(PDF A4サイズ)
2. ぬり絵に色を塗って下さい
3. 出来上がったぬり絵を段ボールなどに貼ってください。
4.裏に、傘や坊などをガムテープなどでしっかりと止めると、当日高く掲げることができます!
5.できあがりです!
当日を楽しく過ごすために
ファッション: 服装は自由です!
持ち物:
•エネルギープラカード
•未来を思う気持ち
•デジカメやカメラ付携帯電話(パレード中にツィートするのもおすすめです!)
•飲み物やお腹がすいたときに食べられるものがあると、元気にパレードできます!
お約束:
•ごみは必ず持ち帰って下さい。
•プラカードは、次回のパレードでまたご使用になれますので、保管しておいて下さいね。

Wednesday, March 30, 2011

Japan, a land where it’s pollen versus radiation

reprinted from Crikey

http://www.crikey.com.au/2011/03/30/japan-a-land-where-its-pollen-versus-radiation/

A lot of the foreign reporters and observers who rushed into Japan after the triple whammy hit on March 11 mistook the Japanese custom of wearing face masks as preparation for the potential radioactive fallout. Many viewers around the world watching the coverage from Japan might have made the same assumption. Admittedly, some were indeed wearing those masks because they were afraid of airborne radiation dust coming in from Fukushima, but most were more likely trying to fend off different kinds of offensive substances getting into their system.

This is spring — the hay fever season with huge amounts of cedar pollen wafting on the air. Hillsides and mountain foothills glow orange all around the country at this time of the year, and the nightly weather forecast on TV always includes a pollen warning for the next day. Since Fukushima, that segment also includes an alert of the level of atmospheric radiation (with details of wind direction and strength).

Hay fever was never quite such the problem it is now. But then again, neither was iodine, caesium and other radioactive substances but in a curious manner, these two problems are related.

For most foreigners Japan has a very urban image, but in fact it is one of the world’s most heavily forested countries — a contender as poster pin-up for the UN designated International Year of the Forests, 2011. According to a UN’s Food and Agriculture Organisation’s Global Forest Assessment Report (2005), 25 million hectares or close to 70% of Japan’s land is forest. Only Finland has more trees. The world average is only around 30% and Australia is way down the list with only 21.3% (NZ is 31% ). Japan’s forest may be the critical factor in two current health problems. To understand why, we need to look at the trees, not the forest.

Japan’s hillsides and mountains used to be quite different from the way they are now. Old-growth forests have long gone, leaving only a few pockets with most of the rest managed forests. Until as late as the 1960s, most of them would be dominated by broad-leaf trees such as beech, oak, elm, birch, horse chestnut, and many others. These forests used to provide people with food, as well as timber and for tools, baskets, roofing materials, fabric and most important charcoal for fuel. Trees were coppiced so that they grew back and grew another harvest within 10-15 years.

Typically, rural farming communities were self-sustaining. They grew rice, vegetables and other cereals in the fields, and during summer people collected fruits and nuts in the forest and in winter made charcoal, from the forest trees, making them an indispensable resource for the rural economy.

Charcoal was used mostly in the city for cooking. Its consumption reached its postwar peak in 1957 — 2.2 million tonnes — but soon went out of favour when imported oil products became readily available, a change that devastated rural economies. Only a fraction over 1% of that 1957 figure for charcoal is used today and the demand for those other forest products has been replaced by cheap mass-produced plastic tools (also derived from oil).

That switch from charcoal to oil signalled urban economic growth, and rural life lost its wealth and the capacity to sustain itself. The loss of income in the rural areas drove many farmers to the city for work. The urban centres needed cheap labour and out of work farmers migrated from the countryside, either in winter or permanently. The catalyst for Japan’s “economic miracle” of the 1960s, imported cheap oil, may have created the army of workers the economy needed, but it destroyed the old charcoal-based energy system and set in motion decades of environmental degradation.

Old forests were either abandoned or cleared for other income options — mostly plantations. More than 10 million hectares of Japan’s forests are now plantation — fast-growing evergreens such as cedar, cypress and pine planted during the late 1950s and ’60s in straight rows. Their wood is good for house building, but not charcoal. They only yield an income when they mature.

Which is where the pollen blows in, because right now a generation of these trees has reached stage where they are producing huge loads of pollen, but sadly, not much saleable timber, because their value has been diminished by cheap imports. In fact these plantations haven’t been maintained properly either because there are fewer forestry workers employed to look after them — nearly half a million in 1960 down to 5000, and they are getting old. A quarter of Japan’s forestry workers are over 65.

Nearly all the young and able workers have gone to the cities. At its peak during the miracle decade, half of the seasonal migrant workforce was made up of people from the Tohoku region, the area hardest hit by the recent earthquake, tsunami and Fukushima radiation hazard. In those days youngsters graduating from junior high school were so prized by employers they were known as the “golden eggs”.

As young people left, rural areas decayed and the forests were left to their own devices. Now the gap between city and rural life in Japan has grown so wide country people have long felt they were completely left way behind. How to catch up and be part of the economic miracle? Companies were reluctant to invest in industrial plants, but the power utilities were looking for locations from whence they could supply power to urban industries — by nuclear power.

When a rural area agreed to a nuclear power plant it would be rewarded not only with jobs (although many would would be only as subcontractors) but all kinds of flow on benefits to encourage locals and to bring in more industry — government subsidised flow on benefits such as roads, railways, ports and of course electricity. Locals suspicious of the health hazards were assured the plants were foolproof (there are people still claiming that Fukushima is an example of the safety rather than the hazard of nuclear power plants). To the eyes and ears of the rural (and coastal) poor, shiny new infrastructure installations were symbols of affluence too tempting to refuse.

Such was the scope of the government’s largesse that many of Japan’s “nuclear towns” have a totally disproportionate range and volume of public buildings, sporting venues and other “municipal” facilities.

Now, after what some are already calling 3/11, nuclear power has lost whatever gloss it had. Even the opposition leader of the Liberal Democratic Party, which propagated that nuclear energy policy for four decades, has called for its review. So things must be serious. In the short term, natural gas and oil may fill the nuclear void, but with the era of cheap oil nearing its end, as admitted in International Energy Agency’s World Energy Outlook last year, maybe Japan should start seriously looking at its forest as a potential energy source.

Who knows, we may even get a return to the old diversity of the mixed forests instead of mono-cultural plantations. And fewer people needing to wear those face masks.

Sunday, March 27, 2011

Nukes and Quakes

Here's the piece I wrote with late Tony Barrell for the Australian edition of the Rolling Stone in June 1996. After Fukushima, nearly 15 years later, it was discovered and the Energy Bulletin republished it describing it as "presceient". Below some points we mentioned in the piece. The whole article is available from here (PDF).
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Monday, March 21, 2011

被災者救援へのパーマカルチャー的考察

昨日パーマカルチャー活動家の一人と話をした。もちろん話題は地震、津波、原発事故のことが中心になってしまう。これをきっかけにもっとエネルギー消費の少ない生活に変わることが生き残った人間にできるせめてものことだろうということで一致する。話題に上ったもうひとつのことは、もし、自分たちが救援される立場だったら、健康を維持し、しかもそういう自立した生活という方向に立て直すために、どんなものを必要とするだろうかということ。こういう話はやっておくといざというときのためになる。被災者の救援に参考になればと思いここに書き記す。

食料は、おにぎりのように調理をしなくても食べられる物、お湯を注ぐだけで食べられるカップめんなどが当座中心になることは避けられない。しかし、少し落ち着いてきたら栄養価が心配になる。できれば玄米を送ってほしい。玄米のほうが栄養価が高いことは知られるとおりだ。バランスのとれた食事が取りにくい状況で、健康維持のためには玄米中心の食事がうってつけだろう。
玄米は炊くのに時間がかかると思われているが、友人は秋田地方に江戸時代から伝わる「びっくり炊き」という方法を使うと、白米と同じくらいの時間で炊くことができることを教えてくれた。


調理はどうするか。
ポータブルのガスコンロが当座は便利だが、ガスの入ったカセットの補給が途絶えれば使えなくなってしまう。そこで思い浮かぶのは七輪だ。燃料の炭は軽くて持ち運びも便利だ。炭がなくなれば木切れなどでも十分使えるだろう。もっといいのはロケットストーブだ。日本では暖房用の大型のものがよく知られているが、第三世界では小型のものを調理に使う。効率がいいこともあるが、それぞれの場所で手に入る材料で簡単に作れるのも被災地には適している。一斗缶やペール缶、レンガ、ブロックなどが材料として使えるかもしれない。燃料は木切れ。日本ロケットストーブ普及協会など、技術のある人が避難所を回り、ワークショップを開催し、避難している人に技術を伝授してまわれば最高だ。


米以外の食料を調理するためには「火なしこんろ」の技術も役に立つ。鍋を数分間沸騰した後、断熱材で包み、余熱で調理するという方法だ。断熱材は布団でもいい。クーラーボックスに鍋を入れてくしゃくしゃにした新聞紙で隙間をうめ、ふたをすればいい。燃料消費が少なくて済む調理法だ。

お湯を沸かすのにはやかんがいるが、少ない燃料で沸かせるやかんは何と言ってもニュージーランドの名産、サーメットだろう。第二次大戦中、兵士の標準装備にもなった。支援を申し出ているニュージーランドから、大量に緊急輸入したらどうだろう。


さて、お湯を沸かせるようになったら、それを暖房に使いたい。今避難所では暖房に灯油ストーブが使われているようだが、天井が高い場所では、全体を暖めることは無理だ。灯油の供給も不安だ。そういう状況で効率的に体を温めるのは湯たんぽだろう。毛布やタオルにくるめば、8時間くらいは温めてくれる。朝は、その温水で顔を洗うこともできる。避難した人に湯たんぽとサーメットがいきわたれば、かなりしのぎやすくなるかもしれない。

何日も避難生活が続けば、洗濯が問題になる。量が少なければ、洗濯板や手洗いでもいいが、量が増えてくれば大変だ。トイレの詰まりを除くためなどに使われるラバーカップとバケツがあれば、手動洗濯機ができる。バケツに水(できればお湯)を入れ、洗剤か削った石鹸を入れ、洗濯ものを入れ、ラバーカップで5分くらいぐちゅぐちゅすればきれいになる。これも材料とちょっとした道具さえあれば、現地ですぐに自作できるはず。お試しあれ。


これらの技術は、どんな場所でもすぐに利用できる技術なので、被災地ばかりでなく、都会で節電に取り組む人にもぜひ試してもらいたい。こういう技術を身につけておけば、いざというときにも困らない。

もうひとつ。これから避難生活が長期化するにつれ、住宅の問題が出てくる。一つの手っ取り早い解決法には貨物用コンテナの流用がある。特に冷凍用の断熱材が入ったものがいい。あちこちの国で被災地での短期収容用に使われた例はたくさんある。住の確保を一刻も早く達成する方法として、ぜひ検討してほしい。

Thursday, March 17, 2011

Japan earthquake: no spring in our step, but it’s in the air

reprinted from
http://www.crikey.com.au/2011/03/17/japan-earthquake-no-spring-in-our-step-but-its-in-the-air/

Springtime is meant be full of life and merriment in Japan. It’s the time of renewal. The paddies in the countryside are ready to be planted with a new rice crop. The end of the school year means kids should be enjoying their break. High school leavers are sitting university entrance exams and graduates are getting ready for their first day at work.


Wednesday, March 16, 2011

Nuclear power: when the answer becomes the problem

with Tony Barrell.
(reprinted from ABC's Drum, also from the Energy Bulletin)

The Japanese are very earthquake-conscious. Maybe more so than others in vulnerable areas.
The anniversary of the great Kanto earthquake which destroyed much of Tokyo in 1923 on September 1 is an occasion for public campaigns and safety drills throughout the country. The Japanese have always been aware that they live on shaky ground and that there is always a chance that somewhere in the country will suffer a really big one. This includes those regions of the country which have more than their fair share of nuclear power plants, such as the huge cluster at Kashiwazaki (which includes the biggest nuclear reactor in the world) on the Japan Sea coast in Niigata, the home region of the disgraced corrupt politician Kakuei Tanaka.

He was the great promoter of nuclear power in the 1970s, especially as a way of providing electricity for the shinkansen (bullet train) line which he made sure had plenty of stops in his home electorate.

Japan certainly has stricter building regulations than many countries but unfortunately that doesn¹t mean they are strictly enforced. Some years back many buildings constructed according to these rules were found to be substandard because avaricious construction companies had cut corners.

Nevertheless, there has been widespread complacency that things are OK. For example, last month several Japanese said to Rick that what happened in Christchurch "would not happen in Japan".

They may have been ready and well-drilled for a huge quake but people were not prepared for the tsunami that followed this one. The buildings that withstood the initial jolt were quickly washed away by the massive force of water on which whole houses, cars and freight containers bobbed about like bath toys. People who survived the quake were soon claimed by the 10-metre-plus wave. Hubris may apply to those who run nuclear power plants. They (and their supporters in the media) claim that because they are better designed and more rigorously constructed none of the 55 working reactors could suffer an accident like Three Mile Island or Chernobyl. It's a phrase we have heard many times in the past week or so that, even if it's true, seems like an echo of an over-confidence which has now become intrinsic to their business.

There's no doubt there was a decline in reactor-building over the past two decades, but in recent years there has been a lot of talk of a nuclear power 'renaissance'. Only days prior to the quake, Chugoku Electric (the utility that serves southern Honshu) began work on a new plant on Kamiseki island in the Inland Sea. It will be interesting to see what happens further south in Kyushu, in Miyazaki prefecture, where a people's referendum is due on April 10 to decide the fate of a proposed reactor in the town of Kushima.

To compensate for the slowdown in building new plants at home, nuclear power is being spread by Japanese interests outside the country. Not long ago, a consortium of utilities and reactor constructors set up International Nuclear Energy Development of Japan (JINED, which includes Tokyo's power utility TEPCO and Toshiba (the company that built the damaged Fukushima reactors) to encourage the export of reactors. JINED has already won a contract for Vietnam¹s second power reactor, and, until the Fukushima disaster, hopes were high for a deal with Turkey (another quake-prone country).

We have frequently been reassured that all Japan's reactors have been built to withstand 'known' quakes (up to 7.9) but the severity of the tsunami that hit the east coast on March 11 was not in the plan; certainly no-one thought it would mean a disruption of national power and communication grids or the introduction of rolling blackouts affecting industry and households alike.

Confusion was such that TEPCO had to phase it in slowly. Train services were reduced to skeleton timetables, escalators and lifts stopped working and shelves in shops were emptied. Thanks in part to the widespread use of the oh-so-efficient Just-In-Time delivery system, supermarkets carry only a minimum of stock so shoppers responded with their own Just-In-Case policy and ready-to-eat meals were soon sold out.

For years, Japan's nine regional power utilities have been promoting the increased consumption of electricity (as the 'all electric' way) with the humble but absurd toilet seat warmer, huge fridges, electric cooking tops, floor heaters and air conditioners, the typical middle-class home has become a power guzzler. Many public spaces throughout the country are so well lit there is hardly any night. Vending machines spew out refrigerated or heated drinks around the clock. Since nuclear reactors can't be turned down or off when demand slows, it seems people have been urged to consume the (perhaps surplus) electricity they make regardless of whether it's needed.

Most trains are now electrified. The new shinkansen line, which opened on the very next day of the quake, links Kagoshima at very bottom of the southern island of Kyushu, with Aomori, at the northern tip of Honshu. The plan is to extend the network even further north to Hokkaido. And to that end the underwater tunnel between the islands has already been built. To top all this, Maglev, the next generation of very very very fast trains, which run on magnetic levitation, is coming closer.

If Japan somehow manages to avoid dangerous fallout from the Fukushima accidents, it will soon have to find other sources of power if the 'electrifying' lifestyle is to continue its expansion. Building more nuclear power plants, however, suddenly seems an unlikely way to service the demand that¹s been established. Even if their operators could persuade a remote town or village to accept a nuclear power station it will take at least a decade to get it up and running. And that's on top of what has been estimated to be a repair bill of between $100 billion and $170 billion for the damage done by the tsunami.

So, what will be used to generate electricity in the short and medium-term?

Will it be coal or oil, and where will it come from? Already China consumes half the world's coal and even without taking into account the cost of global warming, coal and gas will not be cheap. Then there's the problem of instability in the Middle East (Japan relies on the region for most of its oil and gas) and the International Energy Authority has announced that the peak of oil production was reached in 2006 and it will continue to be more difficult and costlier to extract. Nuclear power has long been touted as the answer to the problem of peak oil and some climate change experts have touted nuclear as the answer to pollution and warming. Now that something not that unlike 'another Chernobyl' has occurred in the country where such a disaster was not meant to happen these people may need to think again.

Monday, February 28, 2011

TPPについて私が知っている二、三の事項(3)/Deux ou trois choses que je sais d'elle(3).

壊滅的な地震に襲われた当日、クライストチャーチではアメリカ・ニュージーランド評議会(US-NZ Council)とよばれる団体が主宰する両国の第4回パートナーシップ・フォーラムが開かれていた。21日からのフォーラムに米側からはデビッド・ヒューブナー米大使(1984年から85年、柿澤弘治のスタッフをつとめた)、カート・キャンベル国務次官補(東亜太平洋担当)、ブッシュ政権で通商代表を務めたスーザン・シュワブエヴァン・バイインディアナ州知事(元上院議員)、リチャード・アーミテージクレイトン・ヤイター元農務長官(親ブッシュ政権)、クリス・ヒル元イラク大使/元国務次官補(東亜太平洋担当)、国土安全保障省のマリコ・シルバー次官補など、このほかドン・マンズーロ下院議員など8人からなる議員団も参加したが、22日の朝には現地を離れたため、難を逃れた。
ニュージーランド側からは外務貿易省の実務のトップであるジョン・アレン事務次官(元NZポストの最高責任社)などが参加していた。ニュージーランド側の主催者は日本・ニュージーランド・パートナーシップ・フォーラムなどを通し、日本の経済界とも交流の深い現地経済人やロビイストたちだ。
地震の起きた時、フォーラムの出席者たちは市内8ヶ所に分かれて「昼食会」の真っ最中だったが、全員自力で指定されたラグビー場までたどり着き、空港近くにある南極センターにバスで輸送され、その日のうちにNZ空軍のC-130ハーキュリーズ輸送機でウェリントンに避難した。要人とはいえ、被災者の救助に回されるべき人員や資源が回されたのではないかと疑問視する声もある。

このフォーラムへの参加をボイコットし、難を逃れたのは労働組合協議会(NZCTU)のヘレン・ケリー議長だ。ケリー議長が招待をことわった理由は、TPP推進がこのフォーラムの大きな目的だったからである(ちなみにニュージーランドなどでは普通agreement、協定という言葉が付いてTPPAと呼ばれる)。労組はTPP交渉の不透明さなどを理由に、すでにかなり批判的な立場を取っている。このようにニュージーランドでは交渉の不透明さ、そして主権侵害がTPP反対の大きな理由になっており、問題点を指摘する『No Ordinary Deal』という本も出版されている(農文協から翻訳出版が予定されている)。「ニュージーランドは非売品(NZ Not for sale)」という反TPPキャンペーンが広範に繰り広げられており、20日にやはりクライストチャーチで「TPPを学ぶ会」が開かれていた

これらの心配を打ち消すかのように、US-NZ評議会のスティーブ・ジャコビ議長は地震の前日に放送されたラジオNZとのインタビューで、TPP交渉が秘密裏に行われている理由をこう述べている。
「交渉内容をオープンにしてしまえば既得権を持つ連中が反対する。家屋の売買や雇用契約はオープンでは行われないだろう。WTOの交渉はすべてオープンに行われた。どういう結末になっただろう。だから、TPPの交渉は水面下で行われているのだ」

また、22日の朝、ジャコビはTVNZの番組に出演し、その中で外国の企業や投資家が主権国により商活動が侵害された場合、政府を提訴でき、勝訴すれば損害賠償を求めるることができる条項が含まれるだろうと述べている。しかし、ジャコビは、同じ条項がすでに中国との自由貿易協定の中にも含まれており、何も新しいものではない。その心配は取り越し苦労であると反論している。
これは国対投資家の紛争解決条項(ISDS)のことでNAFTA11章とも呼ばれる。特に医薬品や食品管理、知的財産について、主権が失われるのではないかという危惧がある。例えば、条約締結国が禁煙を決めればフィリップモーリス社などが訴えることが可能であり、ペットボトル飲料の販売を禁止すれば、コカコーラ社などが商業活動を阻害されたと訴えることも可能だと言われている。

ニュージーランドは2005年にブルネイ、シンガポール、チリとの間で環太平洋協定(TPA)を締結したメンバーであり、TPPについても積極的な推進国のひとつと見られている。しかし、昨年12月に暴露されたウィキリークスの米外交電によれば、主席交渉官、マーク・シンクレアはそれほど乗り気ではないようにも伝わってくる。ウィキリークスの暴露した外交電によれば、去年2月にシンクレアは米側に「TPPはニュージーランドにほとんど何の利益ももたらさない」と漏らしたとされている。もし「報い」があるとすれば、日本や韓国の農産物市場に圧力をかけることぐらいであり、それも長期的にみてのことだと述べたとされている。
「ニュージーランドの企業はアメリカ市場に参入できることになるとバラ色の夢を描いているが、それは現実とはほど遠い」
つまり、TPPはほとんど誰の利益にならないものであることを主席交渉官が認めているのだ(もちろん、これはアメリカ大使館の外交官の印象であり、正確だとは限らない)。

そろそろ、交渉の内容が明らかにされるべきではないだろうか。日本ではTPPが農業の問題に特化されて報道され、議論されがちだが、そもそも、この交渉が有権者から秘密裏に行われていることの是非を問うべきだろう。

Thursday, February 24, 2011

リビア情勢分析(2)/More on Lybia.

リビア情勢の流動化が止まらず、原油生産が落ち込み始めている。
それを受け、原油価格が急騰している(ブレントは117ドル、WTIも2008年10月以来はじめて100ドルを超し、102ドルまで上がった)。

ロイターによれば、従業員の退避などにより、アフリカ第3位の原油生産国では約30万から40万バレルの生産が停止。これは生産の約1/4に相当する。この生産停止がさらに拡大するのか、また、どのくらい続くのか、まったく予想がつかない。仮に事態が収拾されたとしても、生産が内乱以前の状態に戻るまでにはかなりの時間がかかるだろう。

1979年のイラン革命では同国の生産の半分以上が止まり、現在に至るまで完全には回復していない。2990年のイラクによるクウェート侵攻では両国の生 産量は数年間にわたり減少、クウェートの油井は荒廃した。2002年のベネズエラの石油産業の大規模ストライキでも生産は滞り、ストライキ以前の水準には 戻っていない。

リビアは主にヨーロッパ向けに1日130万バレルの原油を輸出しているが、主要な輸出国であるイタリア政府筋によれば、輸出港にも混乱が波及し、港湾機能が停止しているようだ。

タイム誌は元CIAの現地要員が書いた記事で、カダフィ大佐に近い筋からの情報として、油田やパイプラインなどの施設を破壊するよう軍の精鋭部隊に命令が出されたと報道している。もっとも、同じ「筋」はチュニジアやエジプトの民衆蜂起がリビアに及ぶことはないと2週間前に語っていたとのこと。それは間違いだったので、この情報もどれほど精度の高いものかは分からないとしている。すでにカダフィはかなりやけになっているようで、分別をなくしている。油田などのインフラの破壊は、自分に反旗を翻す人たちへの復讐の一念からで、リビアをソマリア化してやる、そう言っているそうだ。同じ動機から、イスラム教過激派を監獄から釈放する命令を出したともいわれている。
サウジアラビアのアリ・ヌアイミ石油相はリビアの生産を穴埋めする用意があると発言している。仮に、その言葉通り、リビアの生産はサウジが肩代わりできたにしても、民衆蜂起の波が、生産量ではリビアに次いでOPEC第10位のアルジェリア(日産120万バレル)や第3位のイラン(370万バレル)など、他のOPEC諸国にも広がれば、それは次第に難しくなっていく。
「リビアとアルジェリアが原油生産を呈すれば、原油価格は220ドル超の水準」に達する可能性も示唆されている。2008年の石油ショック以降、上向きつつあった世界経済にもブレーキがかかりそうだ。

Wednesday, February 23, 2011

リビア情勢分析

チュニジア、エジプトなどを席巻する中東北アフリカ(MENA)諸国の情勢不安はついに産油国にもおよび、世界を震撼させようとしている。
カダフィ独裁体制が何らかの形で事態を収拾することができるのか、それとも体制の崩壊、民主化などといった形で状況がさらに流動化するのか、また、リビアより大きな産油国にも影響が波及するのか、世界は固唾をのんで見守っている。
リビアの政情不安を独裁対民主という構図でとらえる報道は多いが、MENA諸国で広がるデモの直接の原因は食料価格の高騰である。リビアの人口は2000年以来23%増えており、ほかのMENA諸国同様、25歳以下が人口の半分近くを占め、腹が減り、職のない連中が直接行動に出ていることが容易に想像できる。だから、たとえどんなに民主的な政権が生まれても、食料の高騰が収まらず、空きっ腹をなんとかしない限り、ふらふらと足下が定まらない状態は続くだろう。

こんなことを言うと「民主主義者」からはひんしゅくを買いそうだが、非常事態では独裁政権の方が混乱を効果的に収拾できることもある(例えば90年代のキューバ)。独裁は悪い、民主政権なら何でもいいというこれまでの枠組みが今、我々が足を突っ込みつつあるピーク以降の非常事態がだらだらと続く時代には通用しないこともある。

リビアにはアフリカ最大のアブラの埋蔵量があり、一日あたりの生産量は140〜170万バレルでOPEC第7位。それほどの量ではないが、需要と供給の逼迫状態が続く状態のポストピーク時代に見逃せる量ではない。

Energy Export Databrowserより転載。
開発生産の担い手は外国企業で、早くから(1959年)リビアの石油開発に加わったイタリアのエニ社が最大の生産(50万バレル以上)をあげている。輸出もイタリアなどヨーロッパ向けがほとんど。ヨーロッパの指標であるブレント原油価格は2008年以来最高のバレルあたり107ドルに達した(北米の指標であるウエスト・テキサス・インターミディエイトは85ドル前後であり、ブレントとの間の価格差は史上最高の20ドル以上に開いている。この考察はまた後日)。
NYTによれば、エニ社を始め、外資系企業はすでに最低限必要な人員をのこし、家族なども避難している。リビアの原油生産が落ち込むのはやむを得ず、原油価格はさらに上昇するだろう。
もちろん、OPEC諸国にリビアの穴を埋めるだけの能力があり、その能力を使えば話は別だ。しかし、ブルームバーグによれば、OPEC諸国からの昨年12月の輸出は前月比で2%減。最大の産油国であるサウジは生産は増加し、ここ2年最高のレベルに達したにも拘らず、輸出は以前にも言及したように国内需要の伸びなどで前月に比べて4.9%減っている。だからOPECがリビアの穴埋めをすることは難しいかもしれない。
リビアショックが他の産油国に広まらなくとも、原油価格は上がりそうで、それが食料価格の高騰にも拍車をかけそうで、腹を空かした民衆の示威行動はMENA諸国だけでなく世界に広まっていくかもしれない。
ピークの影響は玉突き状に世界を震撼させている。

Tuesday, February 22, 2011

クライストチャーチ倒壊/A killer quake hits the garden city.

南島最大の都会、人口約40万のクライストチャーチで22日の昼時、12時51分、マグニチュード6.3の地震があり、これまでに判明しているだけで65人が死亡、多数のけが人が出た。市内の病院の収容能力をはるかに超えるけが人に、重傷者は北島のオークランドに空輸されている。
[youtube=http://www.youtube.com/watch?v=Gp0KGExeMjw&w=640&h=390]
まだ「100人以上」ががれきの中に閉じ込められているという報道もあり、富山出身の語学学校に通う日本人12人が行方不明という情報もある。
ジョン・キー首相は午後、被災地に入り、「我が国最悪の日を目の当たりにしているのかもしれない」と発言した。今日の被害を上回る自然災害は北島のネイピアで256人の死者を出した1931年のマグニチュード7.9の地震だけだ。
市内の道路には亀裂が入り、建物は崩れ、市の中心にある大聖堂の尖塔が折れ、空港も閉鎖された。停電、断水、下水管やガス管の破裂など、町のインフラはずたずたになり、家を失った人など何百人が避難所で夜を明かしている。市当局は節水を呼びかけるとともに、バケツや鍋を外に出し、今夜予想される雨を貯めるよう呼びかけている。市内は非常事態が宣言され、警官、軍隊が投入され治安の維持にあたる一方、対岸のニューサウスウエールズ州からも73人の捜索員が到着、行方不明者の捜索が続いている。
クライストチャーチでは去年9月4日にマグニチュード7.1の地震があったが、震源が10キロと深く、町の中心から30キロほど離れていたため、被害総額は40億ドルに上ったが、大けがをした人が2人だけで死者はなかった。その時に比べ今日の地震は規模は小さいものの、震源が町の中心部から南西に10キロほどの港町、リトルトンの真下だったこと、また、震源が5キロ程度と浅かったこと、地震が起きたのが昼時だったことで被害が大きくなった。去年の地震で建物がもろくなっていたことも考えられる。今日の地震の被害は去年のそれを大きく上回るだろう。
ニュージーランドは「揺れる島々」というあだ名もあるが、太平洋プレートとオーストラリアプレートの境界にまたがっており、年平均14000回ほどの地震がある。そのうちマグニチュード5を越すものが20ほどある。今回の地震は首都ウェリントンで近いうちに大きな地震がある予兆ではないかと心配する専門家もいる。
クライストチャーチはまだ余震で揺れている。

Monday, February 14, 2011

輸出崩壊/Saudis in Audis

エジプトでは大統領が実質的に退任し、中東情勢は一息ついています。産油国を中心に、高騰する食糧価格に対する不満をなだめるため、ばらまきが続いています。エジプトに誕生する新政権が慢性的な不満に対する若者たちの不満を果たして抑えておくことができるでしょうか。これから慢性的に続く食糧高騰の原因のひとつは、アブラの需要供給状況の逼迫です。主要な産油国、輸出国の動向が気になります。

ロイターはジェッダ発でサウジアラビアが国内のエネルギー需要を削減するため、家屋に断熱材を導入したり、節水などに投資することを伝えています。これらの策で、エネルギー需要の4割の削減を目論んでいるそうです。

Energy Export Databrowserより転載

上のグラフで灰色の部分が総生産を表し、みどりの部分が世界市場に出回る量を表しています。注目しなければならないのは、下の方からじわじわと鎌首をもたげている黒い線です。これは国内消費を表しています。

サウジの現状のエネルギーミックスを同じくエネルギー輸出データブラウザーから見てみましょう。



サウジアラビアの電力使用の7割から8割はエアコンで使われるということなので、家屋に適切な断熱材を施せば、国内消費が4割ほど減るという読みもまあ、うなずけます。発電用も含め、サウジではアブラと天然ガスが国内のエネルギー需要をほとんどすべてまかなっており、ここ数年その消費が急激に伸びていることがこのグラフから分かります。サウジなど産油国はアブラの値段が上がれば上がるほど、潤います。そうして得た富が社会全体にまんべんなく回ることはありませんが、それでも国内における消費が増えていくことがこのグラフから分かります。グラフは2009年のBPの統計数字に基づくものですが、これによれば、国内のエネルギー消費は前年比4.2%の伸びです。先のロイター電はOPEC諸国の電力需要の増加を年率8%としています。こんな伸び率が9年続けばエネルギー需要は倍増してしまいます。

さて、サウジをはじめとする産油国の富裕化、そして国内におけるエネルギー消費の伸びは日本やニュージーランドなど、アブラの輸入国にとってどんな意味を持つのでしょうか。また、今回発表されたようなサウジの省エネ策の如何がどんな結果をもたらすのでしょうか。
これはホルムグレンが『未来のシナリオ』で取り上げていますが、いわゆる「アブラ輸出の崩壊」という問題です。産油国における国内消費が増えていけば、世界市場に出回るアブラの量は相対的に減ってしまうということです。一番上のグラフでも、みどりで表されている量が黒い線が這い上がってくるにつれ、減っているのが分かります。これが世界市場に出回るアブラの量です。ロイター電は2028年(わずか17年後!)には世界市場に出回るアブラの量は現在よりも一日につき約3万バレル減り、7万バレルほどに減ってしまうだろうと伝えています。
主流のメディアが「アブラ輸出の崩壊」を取り上げるのは珍しいことで、それなりに評価しなければなりませんが、この計算はかなり楽観的です。国内消費の伸び、そして、現在稼働中の油田の生産の鈍化についての見方がきわめて甘いと思います。たとえこうした楽観的な読みが当たってたとしても、需要と供給が著しく逼迫した状態ではこれだけの量が市場から消えてしまうことは大問題です。オイルピークは生産が頭打ちになるということですが、その影響は玉突き式に社会の隅々にまで波及します。「輸出の崩壊」はその一例に過ぎません。
サウジアラビアでは省エネだけでなく原発まで含めたエネルギーミックスの多様化に取り組んでいるそうです。化石燃料の国内消費を減らすことができれば、それだけ、輸出に回せるアブラも増える。外貨も獲得できるということが、その理由として発表されています。輸入国のほうとしても、とてもありがたいことで、その点では利害が一致します。しかし、産油国の国内消費削減がうまく行くかどうか、その影響は輸出国と輸入国では大きく違ってきます。アブラ輸出国の方では、消費削減にたとえ失敗しても、(もちろん、食料価格への波及など間接的には大きな問題だろうが)直接、困ることはない。しかし、エネルギー輸入国にとっては文字通り死活問題になるでしょう。
それぞれの自宅でも、あのサウジアラビアでもやっているということを励みにして、ひっちゃきに贅肉をそぎ落とすきっかけにしたいものです。

Am not sure if I like it, found it a bit crass, but it sums up the feel, here's Saudis in Audis by GoRemy.

Friday, February 11, 2011

砂漠の誤解か?(ウィキリークス)/Memories are made of this.

ガーディアン紙の報道で暴露された外交電について、アル・フセイニがウォール・ストリート・ジャーナルで反論しています。

アル・フセイニは、アラムコの公式発表されている埋蔵量についてまったく異論はないが、米外交官がアル・サイフのコメントとして引用した7160億バレルの「埋蔵量」に異を唱えたのだとしています。

7160億バレルは可採埋蔵量と非可採埋蔵量を含む「原始埋蔵量」のことである。サウジアラビアの生産可能な埋蔵量、いわゆる「確認埋蔵量」は2600億バレルだと公式発表されている(アル・サイフは、生産可能な埋蔵量は「原始埋蔵量」の約51%、すなわち、3580億バレルくらいだろうと言っている)。

つまり、アル・フセイニはアラムコの「確認埋蔵量」やアル・サイフの推定にも異論はない。ただ、「原始埋蔵量」を「確認埋蔵量」と混同すると、サウジアラビアの生産キャパが何千億バレルも水増しされてしまうと米外交官に言ったのだが、それが誤解されたと言っています。

ウィキリークスが暴露する外交電は、米外交官が自分の聞いた話、収集した情報をワシントンに報告したものです。暴露された文面はいくつかのフィルターのかかった生情報であり、検証されたものではありません。だから、それを読む時にはそれなりの理解が必要になるのは事実です。しかし、まあ、逆も可能なわけで、本当はあの時、そう言ったのだけれど、どうせ誰も反論できないだろうから、言い繕っちゃおうというケースもあるかもしれません。

重要なことは、現代社会は砂漠の王国の生産する原油にその存続を依存しています。サウジアラビアの埋蔵量や生産可能な率は、したがってきわめて大事な数字です。しかし、サウジアラビアの発表する数字はどれも検証されたものではなく、第三者の検証がない限り、どうにでも言いくるめることができるということです。

とりあえず、昨日お伝えしたアル・フセイニの発言を米外交官が引用したとされる外交電の該当部分を訳しておきます。
(前略)
12月1日行われたアラムコの掘削シンポで、上級副社長で現石油探索生産部長のアブダラー・アル・サイフは、サウジの埋蔵量を7160億バレルと発表し、そのうち51%が回収可能だとした。アル・サイフは、歴史的な傾向をみれば、今後20年には、埋蔵量が9000億バレルに拡大し、回収可能な原油の率は70%に上るだろうと明るい見方を示した。
アル・フセイニはこの見方に組せず、公称確認埋蔵量(7160億バレル)のうち、多ければ3000億バレルは「推測による資源」であり、過大報告されていると発言した。アル・フセイニは、そのかわり、すでに確定した埋蔵量、そしてこれまでの生産量や現在の技術で採掘可能な量についてのみ焦点を当てた。それは3600億バレルであることは誰もが同意している。アル・フセイニの考え方では、もともとの確定埋蔵量の半分である1800億バレルの生産を超えれば、その後はゆっくりとしかし確実に生産は減少し、どんなに努力をしてもそれを止めることはできない。アル・フセイニの計算によれば、これまでほぼ1160億バレルが生産されており、その決定的な分水嶺に到達するまで、残りは640億バレルということになる。日産1200万バレルならば、分水嶺には14年で到達する。アラムコは、次の10年、日産1200万バレルを上回る生産をあげることが可能ではあるが、分水嶺到達以降に始まる容赦のない生産減をふりのけるためだけに最大の努力を払わなければならなくなるだろう。アル・フセイニによれば、生産の高原状態は15年ほど続き、そのあとには生産減退が始まるということだ。
アル・フセイニは油田の減耗率が今後のアラムコや世界の生産の日程の鍵を握ると説明した。生産を上げるということは、すでに生産中の油田に新たな生産キャパシティをただ単に加えることだけではない。減耗率を加味すれば、新たな油田の生産は減耗する生産を補い、さらにその上、上昇する需要を賄わなければならないからだ。IEAの推定では、世界の減耗率は4%と見積もられている。2006年のアラムコの発表によれば、サウジアラビア全体のの減耗率は2%と見積もられている。
アル・フセイニによれば、日産200万バレルが需要増を満たすために必要であり、400万バレルが現存する油田の減耗を補うために必要となり、世界的には、少なくとも600万バレルの生産増が必要とされるだろう。
アラムコが計画するような生産増を達成できないもうひとつの理由は、補助資源の欠如である。例えば、アラムコは2009年までに1250万バレル原油生産を目論んでいるが、それが到達できないのは、原油の量が不足しているからではなく、熟練エンジニアや技術を持つ建設会社や精製のキャパが不足しており、産業用インフラの開発が遅れていたり、生産工程のマネージメント不足(しっかりした生産計画やテクニックを持たずに、過度に掘り出してしまうと、その油田のトータルな生産力を損ねることになる)によるものだ。
(後略)

And here is how Memories are made of this, the great classic from the inimitable Saints.

サウジの埋蔵量は水増し(ウィキリークス)/how long?

IEAが去年の「世界エネルギー展望」という年次報告書で「在来型原油の生産ピークは2006年だった。もうこれからそれが上向きになることはない」と報告して以来、「ピークオイル」という言葉はかなり普通にあちこちで目にするようになりました。しかし、(IEAを含めて)意味が分かっていない人が多いですね。

昨日もイギリスのガーディアン紙がウィキリークスが暴露した外交電を転載しています。ウィキリークスが暴露した5つの外交電は現地のアメリカ大使館から国務省に送られたものです。外交官の目から見て「極秘」だとか「秘密」としただけで、ピークオイルを追ってきた人たちにはとりたてて目新しい内容はありません。これまで秘密のベールに包まれてはいたものの、すでにかなり想像がついていたこともたくさんあります。

たとえば、2007年12月10日付けの外交電では国有石油会社のサウジ・アラムコの元石油探索生産部長のサダド・アル・フセイニの公称確認埋蔵量(7160億バレル)が4割程度も過大報告されているという発言を引用しています。まあ、これなんかも、すでにピーク論者の間では当たり前に考えられていたことです。
(自分のようなシロートですら5年前にこんなことを書いてます。水増しされたクウェートの原油埋蔵量

アル・フセイニはまた「ピーク・オイル説には組しないものの、世界の原油生産は5年から10年以内に高原状態に達し、15年くらい続いたあと、減少し始めるだろう」と述べたとされています。この発言がなされた時期から察すると、早ければ2012年には「高原状態」に達するかもしれないということです。アル・フセイニはは組しないとは言うものの、認めていることはピーク・オイルそのものです。彼が組しないというのはピークオイル「説」で言及されるピークの大きな影響のことかもしれません。
その点では、昨年「2006年が原油生産のピークだった」と認めたIEAにしても同じで、エネルギー展望でも「だから、どうだったっての?」という立場をとっています。ピークオイルがただ単に原油生産が頭打ちになる、これ以上伸びないだけだ。だからどうなのって論調は、昨今日本のメディアでも目にします。
例えば、こんなのがあります。
近年、ピークオイル論が法華の太鼓のように声高になる中、将来のエネルギー問題は、我々の生活の屋台骨を揺るがしかねないことになってきているわけだが、 今回のブラジルの巨大油田の発見と開発のニュースは、この、エネルギー問題を、緩和させる、あるいは薄れさせることとして、大いに歓迎されるべきことである。 

油田発見のピークは1964年のことです。もう50年前のこと。カリオカ油田のようなのがボコンボコン、それこそ「だんだんよくなるなんとやら」なペースで見つからないのはなぜなのでしょう。50年の間に技術は進歩しなかったのか。金もばんばんつぎ込まなかったのか。

この筆者もアル・フセイニやIEAと同じで、ピークの意味がまったく理解できていないようで、だからどーなのと。2008年以来の不況はどうなんだ。それと同じこと、もしくはもっとひどいことがわずか3年後の今年繰り返されようとしている。その理由はなんなんでしょう。
「法華の太鼓のように」繰り返すのは、これからの石油ショックが恒常的なものであり、石油の有用性、エネルギー収支のよさを考えると、現在のようなぬるま湯につかった社会は続いていけないからです。現代人はぬるま湯から自ら抜け出ることができるのか、それともどんどん冷えていく風呂の中で風邪を引いて、最悪、こごえてしまうのか。そういう岐路に立たされている。そういう時代に主体的に、現代社会という暴走列車を止めることができるのか。行く手には線路が途切れてることをしかっと目を見開き、見ようとするのか。これからの道のりは、がつんがつんとケツがどんどん痛くなっていきます。乗り心地は悪くなるばかりです。しかし、今なら、まだ社会を補修するだけの資源が残っている。それを浪費するのではなく、エネルギーが減少する将来のために使うことができるのかどうか。
自分たちが生きているのはこういう希有な時代なんです。そういうまれな時代にはそれにふさわしい見方が必要になります。そういう見方を欠いたまま、TPPがなんちゃらかんちゃらって言われてもねえ。

How long, indeed, here is a live recording of Die Haut song, Subterranean World (How Long) with Anita Lane and Blixa Bargeld.

Friday, February 04, 2011

しばらくムバラク?/All the young dudes.

エジプト情勢がムバラク大統領が9月の選挙には立たないと宣言してからも、流動化が止まらない。バラク・オバマ政権は「しばらくムバラク」の即時退陣を求めているそうだが、それでエジプトだけでなくMena地域に広がる社会不安が一層されるのか、きわめて疑問である。

チュニジアから始まりエジプトで燃え盛る情勢不安の原因はいろいろ指摘されている。しかし、ほとんどのマスコミで軽視されていることのひとつに食糧価格の高騰がある。FAOの最新の報告によれば、食糧価格は最高を記録した12月からさらに3.4%上昇したことを伝えている。穀物の価格は、最高価格を記録した2008年にはまだ届かないものの、先月より3%上がったのが不気味だ。ちなみに、エジプトの農業大臣は「食糧の4割を輸入に頼っている。小麦に関しては6割が輸入だ」と2010年に発言している。
もうひとつ、なかなか報道にはでてこないことだが、この地域の人口構成がきわめて若いということがある。ドイツのder spiegelが指摘するように、中東から北部アフリカ地域(Mena)の人口の半数以上が25歳以下である。


der spiegelより転載

国際通貨基金(IMF)によれば、これらの地域の失業率は、スーダン、ヨルダン、チュニジア、アルジェリア、サウジで軒並み10%以上、エジプトは8%強とされている。まあ、アメリカとほぼ変わらない数字なので、なんてことはないと思ってしまいがちだが、若年層の失業率は一般的に社会全体の数字の倍といわれており、上記のように、ものすごい数の若者がいる国ではものすごい数の若者が失業しているはずだ。エジプトでデモに繰り出し、ムバラク打倒を口にする人の大半は食糧が高くなり、食うものも手に入らず、職がない、カネもない、誰かなんとかしろ、そんな気持ちなのではないだろうか。
食糧価格の高騰が引き起こす社会不安はチュニジアやアルジェリア、エジプトだけでなく、地域全体に広がっている。「食糧価格の高騰で倒れそうな25カ国」という記事にはチュニジア(18位だが、すでに倒れてしまった)、リビア(16位)、スーダン(8位)、エジプト(6位)、レバノン(5位)、アルジェリア(3位)、モロッコ(2位)と、この地域の国が軒並みランクされている。
サウジアラビアやクゥエート、アルジェリアなどの産油国は石油生産でそれなりに潤っているので、政府が補助金を出し、ある程度まで食糧価格高騰の影響を抑えることができる。クウェートは「建国50周年記念」と称して一人30万円と1年2ヶ月分の食糧を支給するが、産油国以外ではそうそう大盤振る舞いもできるものではない。アルジェリア(日産2百万バレル弱を生産。あまり多くないようだが、ちょうどOPECの余剰生産能力に匹敵するくらいの量で、特に受給が逼迫する昨今の状況ではきわめて重要。)も、政府が食糧価格に介入したおかげで、社会不安はとりあえず沈静化している。しかし、国際価格が上昇し続ければ、再燃の恐れは十分にある。

ここから予測されることは、このまま食糧価格の高騰が続けば、現在は国民の間の不満を補助金でそらしているMENA諸国のなかにも、それができなくなる国がでてくる。そして、それが何らかの形で産油国に飛び火すれば、アブラの生産が減り、現在バレルあたり90ドルを越した原油価格がさらに高騰する恐れがある。その結果、食糧価格がまた上昇する。そういう循環になる可能性は十分ある。

もうひとつ、エジプト危機の心配はスエズ運河への波及だ。EIAによれば、毎日この運河を地中海方面に百万バレル、逆に紅海方向へは80万バレルの原油やアブラ関連品が動いている。量的にはそれほどではないが、やはり、受給が逼迫した時勢だけに、ここが何らかの形で通過不能になれば、原油価格、そして世界経済へストレートに跳ね返ることは間違いない。それがまた食糧の価格を押し上げる、そして、それがまた危機にアブラを注ぐという循環になります。それがまたアブラの価格を押し上げる。

各国政府はどちらも可能性は少ないだろうと楽観しているようで、エジプトなどの「政権交替」や「民主化」で危機が脱出できるだろう、アラブとアブラの安定が回復できるだろうと期待しているようだ。しかし、上記のような要素を考慮すると、それだけで螺旋降下に歯止めがかかるものなのかどうか。

Here's a song about being twenty-five, originally released by the Mott the Hoople, All the young dudes.

Thursday, February 03, 2011

逆巻く嵐(2)/Nasty as Yasi.

カテゴリ−5と強度を増したサイクロン・ヤジが昨夜、クイーンズランド東北部へ上陸しました。
同州ではつい最近も未曾有の水害があったばかりで、かと思えば、数ヶ月前までは何年にもわたる旱魃に苛まれていたわけで、地球環境ゲテモノ化時代に生きていることをますます実感させられます。OECD諸国(いわゆる先進国)の中ではもっとも気候変動の影響を受けやすい国と言われるオーストラリアですが、これからはますます「異常気象」が頻繁になることでしょう。他の国に暮らす自分たちもそれを他人事ととらえず、どこにいようが狭い地球の上、それぞれの場所でも起こりうることだととらえ、行動していかなければならないと思います。なんにしても、自分たちはゲテモノ化時代に生きている、しっかりと立場を認識するところが出発点になります。

入ってくる情報によれば、2人が行方不明だそうです。サイクロンが直撃した地帯はまるで、戦場のようです。しかも、有数の農業地帯だけに農作物への被害が心配です。このABCニュースでも見られるように、バナナやサトウキビが根こそぎにされました。。
昨夜サイクロンの直撃したタリーやイネスフェイルなどの地域では全国のサトウキビの3割が生産されています。生産者団体のケイングロワーズは直撃前に、被害は5億ドルに上るだろうという被害予想を発表しています。オーストラリア経済は鉱山景気で好調には違いありませんが、水害に続くサイクロンの直撃で、成長率は鈍ることでしょう。気象庁はサイクロンの季節はまだ始まったばかりだと更なるサイクロンの襲来に警告を呼びかけています。
サイクロン・ヤジが直撃したこの地域は5年前に大型サイクロン・ラリーの直撃を受けた場所です。このときのサトウキビの損失は4割から5割に上ったそうで、今でも、このときの被害から立ち直っていない農家もいるそうです。バナナは全国生産の8割から9割がこの地域に集中しているため、ラリーの通過したあと、全国で価格が急騰しました。昨夜のサイクロンは「ナパームが炸裂したような感じで、ラリーの10倍もひどい、これまで経験したことのない、ものすごい嵐だった」という地元住民の声もあります。ラリーよりも被害は大きいかもしれません。
ヤジの影響は国内経済だけにとどまりません。砂糖の国際価格は上昇中ですが、これがさらに押し上げられ、しかも、砂糖はいろいろな加工食品に使われるだけに、食物全体の価格も上昇するでしょう。エジプトなど中東北アフリカ諸国(Mena)の社会不安の一因が食糧価格の高騰であるだけに、これらの地域だけではありませんが、玉突き状態で、社会不安が増していくこともあり得ます。
でかいからとはいえ、たかがひとつのサイクロンが何千キロもはなれた国を襲撃した。そのこと自体も現代の地球の発狂具合を表しているとはいえ、その影響がこちら側の生活にもじわじわと及んでくる。それがピークとゲテモノ化時代の切羽詰まった状況を象徴しています。

To get the feel of it, here's the Sadistic Mika Band's classic, from the Black Ship album, the Typhoon song.

Monday, January 31, 2011

海イノシシを叩きのめせ/(re)search and destroy

南氷洋を舞台とする日の丸チョーサ海イノシシ屠殺船団と、(海賊)シーシェパードの戦いが新たな局面に入ったようです。報道管制をしいていたシーシェパードからの報告が復活しました。

シーシェパードの新鋭高速艦ゴジラ号は今月22日、タスマニア州の州都に寄港し、エンジンポンプの故障を修理したあと、ロス海周辺の戦域に復帰。このゴジラ号がホバートに行く前に気象気球で、捕鯨母船、日新丸の位地を把握。スティーブ・アーウィン号はゴジラ号からの連絡に基づき、18日から給油船サンローレル号の追尾行動から離れ、日新丸に向けて航行開始。25日には積み込んだヘリコプター、ナンシー・バーネット号がついに日新丸を捕捉。(このへん、「大本営」からの発表がないので、海賊軍団からの発表に頼ることになります。10億円ともいわれる血税でやってる「チョーサ」海イノシシ屠殺なのでありますから、水産庁ももっと日本の納税者にジョーホーを流してもいいと思うんですけど。そのへん、日本の日の丸ノーゼーシャは、感じないっしょうか。)
それはともかく、ゴジラ号の気象風船にはカメラのほか、レーダーやら通信を傍受する器械がつまれてるそうなんで、約1万メートルの高空から「敵船団」を探すことができるそうです。ういっす。
んで、日新丸を追うスティーブ・アーウィン号は27日の時点で、燃料がうっぷうっぷ。足りなくなっちゃって、往復16日かけてニュージーランドのウエリントンに給油に向かうそう。日新丸の追尾は僚船ボブバーカーと帰投するゴジラに任せる。ロス海の氷の海へ逃げ込む日新丸。そら、海賊が追ってくるぞ。
これまでの(海賊側からの)情報を総合するとそうなります。
ワトソン船長の率いる船が戻ってくるのは早くて2月半ばのこと。チョーサ捕鯨船団としては、鬼の居ぬ間に穫れるだけクジラを捕っておきたいところ。ところで、今期はすでにチョーサ用にどのくらい、海イノシシ、穫ったんでしょうね。
まあ、寒い日本で火を焚いて、手を温めながらって百姓は、クジラはクジラでも山クジラの方がもっと切実な問題だと感じてるんじゃないっすか。以前は山クジラ対策の補助事業もあったそうですが、仕分けされちゃっ。すぱっと。でもどうせ仕分けるんなら南氷洋の海イノシシのチョーサじゃないかなあ。ばしっと切らなけりゃならないのは。

(Re)Search and Destroy

Tuesday, January 25, 2011

英国ピーク事情/Teqs rules UK?

超党派の議員で作られる「ピークオイルに関するグループ(APPGOPO)」がTeqsというエネルギー配給制度の導入を提案する報告書を提出しました。
TEQs (Tradable Energy Quotas)は「取引可能なエネルギー割当」のことで、テックスと発音するそうです(ニュージーランド人が発音すると「ダニ」のように聞こえちゃう。)

この報告書をまとめたのは無駄のない経済関係(The lean economy connection)というロンドンにある研究機関です。これは昨年11月に他界したデビッド・フレミングが立ち上げた機関で、テックス自体もフレミングが1996年に最初に提唱したものです。

フレミングは環境運動やエネルギー運動の活動家で、英国の緑の党の創設にも寄与し、1990年代からピークについての対策を講じるよう呼びかけた人です。ピークへの対応のひとつとして日本でも広がりつつあるトランジション・タウン運動の生みの親、ロブ・ホプキンスは「ハインバーグのピ−クオイルに関する考察、ホルムグレンのパーマカルチャー、そしてフレミングのたくましい地域社会という考えをまとめたものだ」とフレミングの影響の大きさを語っています。だから、関係者のなかには、フレミングをトランジション・タウン運動の祖父と呼ぶ人もいます。
英国におけるオイルピークが活発化するひとつの契機は1999年4月、プロスペクト誌に掲載されたフレミングの「次の石油ショック?」という記事でした。
この記事で、フレミングは前年の『世界エネルギー展望』には暗号が含まれている。大きな影響をもたらすであろうエネルギー危機が近いことを示唆しているのではないかと国際エネルギー機関(IEA)の発表をいぶかりました。こんな記事をそれから5年とか10年後に書いたならともかく、1999年に書いているところがフレミングのすごいところです。なにしろ、その年の1月には石油価格は最近では最低のバレルあたり17ドル(現在の1/5)をつけたのですから。
これを読んだIEAの主任エコノミスト、ファティ・ビロールはフレミングに会いたいとコンタクトをとってきたそうで、「あなたの読みは正しい。世界でもこれが分かったのは6人くらいじゃないか」とフレミングに言ったとされています。フレミングが1996年にはじめて言及したエネネルギー配給制度の確立に全力を注ぐようになったのはビロールと会ったあとだといわれています。
さて、英国議会のなかに2007年の7月に設置された「ピークオイルに関するグループ(APPGOPO)」はピークオイルの経済や国民生活への影響を図り、適切な政策を進言することを目的とする超党派の議員からなるグループのことです。ジョン・ヘミング下院議員(自民党)が座長で、保守党、自民党、野党の労働党、緑の党など、国会に議席を持つすべての政党の議員が参加しています。
イギリスではすでに2008年の11月に「気候変動法The Climate Change Act」が発効しており、法的には、個人にそれぞれ大気汚染の許容範囲を認め、使わなかった汚染権を取引したり、足りなくなれば買い取ることができるようになっています。まだ導入はされていませんが、オーストラリア領のノーフォーク島で排出権個人取引の世界最初の導入実験が今年早々にもはじまることになっています。
テックスはそれと似たような形で、それぞれの大人にこれだけのエネルギー(ガソリンと電力)を使っていいよという形で、毎週エネルギーの使用権が配給されます。エネルギーの1ユニットはそれぞれの燃料の生産から消費の過程で生産される二酸化炭素1キロに相当すると定義されています。したがって、テックスはエネルギー配給制度という側面と同時に気候変動対策でもあります。
テックスは個人あてに電子的に配給され、実際にガソリンや電力を購入する際には割当枠とカネを支払います。個人の消費が割り当てられたエネルギー枠を下回れば、あまりは市場で取引することができ、足りなくなればエネルギー割当を他の人から買わなければなりません。それが省エネを促す、温暖化ガス生産を抑えることになるという目論見です。公共機関や企業は毎週、必要なエネルギー割当を購入しなければなりません。
全国的に出回るエネルギー総量は政府が決定します。出回るエネルギーの量を毎年落としていけば、エネルギー減耗対策にもなり、気候変動対策になるという仕組みです。

法的には前述の「気候変動法」に基づき、テックスは今すぐにでも導入することができますが、この報告書を発表したAPPGOPOの座長、ヘミング議員は明日導入するというわけではないと述べています。まだまだ、議論が必要になるはずです。
テックスの導入がいつになるのかはともかく、実効はどうでしょう。果たして英国一国における導入がどれほどの効果を生むのでしょうか。英国が節約した分は「これまで通り」を決め込む別な国で消費されてしまうのではないか。そういう心配があります。また、それを防止するために国際的な枠組みを作ろうとすれば、京都議定書のように延々と時間がかかり、しかも合意ができても、誰も真剣にならないという弱点があります。
エネルギー減耗議定書をつくろう、国際的な枠組みをつくろうという提案はリチャード・ハインバーグなどによって繰り返されていますが、なかなか前に進んでいません。APPGOPOにも関わってきたジェレミー・レゲットは「京都」や気候変動の国際会議にも自ら関わった経験から、国際減耗議定書は時間のむだだと著作『ピークオイルパニック』で言っています。
導入がいつになるにせよ、こういう大事なことを国会議員が真剣に議論し、研究している、導入へ現実的な道筋も考えているということはうらやましい限りです。
些細なことにばかり終始するどこかの国の議員は爪のあかでも煎じて飲んでほしいものです。英国の同僚に見えることがあなた方にはなぜ見えないのですか。どんな時代に生きているのか、その時代はどんな問題を抱えているのか、真正面から見てください。ピークと気候変動の複合作用がどんな影響をもたらすのか、そしてどんなシナリオが可能なのか、それを考える格好の入門書はホルムグレンの近刊、『未来のシナリオ』です。何人かの議員には本が送られているはずです。ただつんどかないで、ぜひ、ページをめくってみてください。

Sunday, January 23, 2011

水色の自治/Plastic passion (is hard to handle).

昔は日常的に使っていたのに、今ではまったく手にすることのないもののひとつにプラスティックのボトル入り飲料水入りがあります。プラスティックの買い物袋と同じ頃、ほとんど同じ理由で使うのをやめることにした。どちらも格好が悪くてださいし、手触りも嫌いだし、どこかへ捨てなけりゃならないんだもの。

そのボトルが回り回ってどこへ行くのか、またどうやってそのボトルが作られたのか、なぜ、こんなに格好わるいのか、考えだしたらとても使えなくなった。
それらを捨てる「どこか」は見つからないし、「どこか」のはずの場所はださくて唖然としちゃった。「どこか」は、もうそれはいろいろ見に行きました。東京の「夢の島」も、そのあと何日も匂いが染み付くくらい見学させてもらったし、いろいろな町の「埋め立て地」もいやというほど見て回り、あまりにださいんでうんざりしちゃった。人間の技術だとか、叡智だとか、偉そうなこといってもせいぜい、この程度なのね。
[youtube=http://www.youtube.com/watch?v=uLrVCI4N67M&w=480&h=390]

喉が渇けば、ボトルを買う習慣が身に付いている現代人ばかりなのかと思ったら、そのあたりの感覚を共有する人が少しずつではありますが広がっているようです。
1月21日付け、オーストラリアのABC放送のニュースによれば首都の国立大学、キャンベラ大学が飲料水のペットボトルを販売禁止にするそうです。学生とスタッフあわせてキャンパス人口は13,000人。この措置で年間14,3000本のボトルが消費されないことになると予測されています。
キャンベラ大学学長のパーカー教授によれば、
ボトルを作るのに200ミリのアブラがいる。そして1リットルの水を作るために3リットルが必要。ボトルは43%がリサイクルに回されるが、残りはゴミとして捨てられ、埋め立て地にまわる
そうです。
日本ではどのくらいがリサイクルに回るのでしょうか。これを見ると、日本もにたようなものでしょうか。たとえリサイクルが100%でも問題がないわけじゃありません。リサイクルするためには、集めたり、仕分けをしたり、そして別な新しい製品として使えるようにするために、またエネルギーが必要になるからです。
知らなかったのですが、オーストラリアではすでに2009年、ニューサウスウエールズ州のバンダヌーンという町で、世界ではじめて、ペットボトル飲料水の販売禁止が導入されています。同じ年の7月に住民投票が行われ、355対1で禁止を決めたそうです。今回のキャンベラ大学の方が規模も大きく、しかも高等教育機関ではもちろんはじめてです。学生たちの間から、そういう提案が出てきたそうです。
キャンベラ大学では、バンダヌーンでもそうでしたが、噴水式水飲み器の設置が予定されています。日本でもオーストラリアでも、昔は駅や公園にあって、誰でも無料で水が飲めたものです。人間は水がなければ生きていけないわけで、きれいで飲用に適する水を社会がみんなのために提供するというのは、きわめて理にかなうことだと思います。

地域の住民や団体が、それぞれの場所でこのような理にかなうことをやっていくことが自治であり、その伝統がオーストラリアではまだまだ、どくんどくんと脈打っているのかもしれません。それとも、オーストラリアは世界中でも気候変動の影響を最も受けやすい場所のひとつであるだけに、そこに暮らす人が人一倍敏感に反応しているだけなのかもしれません。
昨今の日本に見られるような、グローバル化への醜い悪あがきの流れで見れば、こうした自治の動きはTPPなどの「自由貿易」協定では潰されかねないものであることも留意しておかなければなりません。
ここでも言及しましたが、「NAFTA(北米自由貿易協定)の11章」とよばれる「国対投資家の紛争解決(ISDS)」があります。投資家がパートナー国の政策により不利益を被った場合、提訴することができ、その投資家が勝訴すれば、パートナー国は損害賠償をしなければならないという条項です。もし、オーストラリアがこのような条項を持つ「自由貿易協定」をどこかの国と結んでいれば、ボトル入り飲用水で金儲けをする企業(例えば、赤と白の色使いで有名な企業など)が、バンダヌーンやキャンベラ大学の措置を提訴することは容易に想像できます。

人間には自治も水も欠かせません。それらを人間から奪おうとするのがグローバル化であり、自由貿易であるなら、遠慮します。ださいし、きわめて格好悪いんで、自分はローカルで行くことにします。

Here's how to handle Plastic passion.

Friday, January 21, 2011

地方の、地域の人々の草の根の動き/relocalise now.


先日紹介した「TPP反対の大義」に収録される文章で関曠野はこう言っています。

そうした方向転換を中央の政府には期待しない方がいい。おそらくそうした転換は地方の、地域の人々の草の根の動きとして始まり、 それが自治体を動かし、自治体が国を突き上げる形で始まるだろう。そこに日本の未来があることを、私は確信している。

関が「地方の、地域の人々の草の根の動き」と呼ぶ活動が自分の田舎の信州安曇野(この呼称は実はあまり好きではありませんが、それはまた別な話)で展開されるようです。ぜひ、お誘い合わせて参加ください。

ーーー<転載>ーーー
安曇野からのカントリーメール 

今年の春からの講座の案内をさせて戴いたところ
たくさんの申し込みがあり感謝しています。
1年間安曇野に通うことで新たな発見とつながりが生まれることと思います。
 まだゆとりのある講座もございます。
参加をお待ちしています。

興味のある方に ご紹介戴くと有難いです。
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■自然から学ぶ~心地よい暮らし 募集中
 ■安曇野自然農塾           1次募集締め切り一月末
■安曇野家族田んぼの会       募集中   
■安曇野家族かまどの会       募集中
■安曇野パーマカルチャー塾 キャンセル待ち若干名募集中

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■自然から学ぶ~心地よい暮らし
 ヨーガ、アーユルヴェーダをベースに マクロビオティック、パーマカルチャー 
自然農、自然体験 手仕事 など 持続可能な心地よい暮らしを学びます。
食事はアーユルヴェーダを基本としたヘルシーな菜食メニューを
料理教室で一緒に作ります。
期 間:2010年4月~11月までの月1回 土日の1泊2日、全7回
参加費:5万2千円
http://www.ultraman.gr.jp/shantikuthi/oneearthclass2011.htm
■安曇野自然農塾
信州安曇野の自然の中、一年を通じて自然農を学び、
自分の畑で作物を作り いのちの営みを感じてみませんか?
開催日程:2010年3月~12月の全10回
受講料:8万円
http://www.ultraman.gr.jp/sizennou/2011azuminosizennoubosyuyoukou.htm
■田んぼの会    
昔ながらの農作業を家族で体験します。家族連れも大歓迎
参加費 1000円 年4回
http://www.ultraman.gr.jp/shalom/tannbonokai2011.htm
■かまどの会
素敵なかまどとアースオーブンを使ってのアウトドアークッキングです。
参加費 年間1800円 年5回
http://www.ultraman.gr.jp/shalom/kamadonokai2011.htm
■安曇野パーマカルチャー塾  キャンセル待ち募集中
開催日程:2011年3月~12月の全10回(1泊2日または2泊3日)
受講料:10万5千円
http://www.ultraman.gr.jp/perma/2011bosyuu.htm

どれも人気のあるワークショップで定員になりお断りすることが多いです。
早めにお申し込みください。
お逢いできるのを楽しみにしています。
ーーー<転載終了>ーーー

Thursday, January 20, 2011

TPPについて私が知っている二、三の事項(2)/Deux ou trois choses que je sais d'elle(2).

TPPについて、相変わらず真空状態の中にでもいるかのような視点から、ああでもないこうでもないって意見が大量に垂れ流されていて、びっくりしてしまいます。

そういう汚濁の中に、自分たちが呼吸する時代がどんな時代であるのか、びしっと見据えた意見もあります。

そしてTPPで騒ぐマスコミが知らん振りをしているのは、ピークオイルの問題である。
国 際エネルギー機関はこの2010年11月に、「世界の原油生産は2006年にピーク(増産の限界点)を越したと見られる」と発表した。もう経済成長はあり えないのだ。今後は原油生産の低減で、工業経済はガス欠状態に陥り、徐々に収縮していくだろう。貿易を支える海運も、燃料の高騰で採算がきつくなる。ピー クオイルの厳然たる事実は、今世紀はエネルギーと食料の危機の世紀であること、そして人類の未来は長期的には農業中心の地域共同体にあることを示してい る。
この危機は、中国などですでに表面化してきている。TPPどころではない。われわれは手遅れにならないうちに、文明の転換のための作業を始め なければならない。・・・そうした方向転換を中央の政府には期待しない方がいい。おそらくそうした転換は地方の、地域の人々の草の根の動きとして始まり、 それが自治体を動かし、自治体が国を突き上げる形で始まるだろう。そこに日本の未来があることを、私は確信している。


これは農文協が年末に緊急出版したTPP反対の大義に収録される関曠野の文章です。これまでに言及しているように、これからも今のように石油をじゃぶじゃぶと使う暮らしを続けていけるのか、今のような世界貿易を続けていけるのか。そこまで踏み込んでTPPのようなことも、判断しなければなりません。

もうひとつ、TPP推進派は気にもかけないのか、あまり口にしませんが、以前ここでも言及した食品安全近代化法は1月4日に大統領が署名し、発効しました。

TPPに加盟すれば、日本の食品についても同様の基準が要求されるようになるのでしょうか。数年前に言及したNAISなんてのも導入しなければならなくなるかもしれません。

上で紹介した文章で、関はこうも言います。

「TPPに参加しないと日本は国際的に取り残される」と言う。
何から取り残されるのか。タイタニックに乗り遅れるのは結構なことだ。

銛/Like a harpoon in my heart.


その後、南氷洋で何が起きているのか、シーシェパードからもゲーケンからも発表がなく、(チョーサ捕鯨を金銭的に支援する)納税者は蚊帳の外なのですが、もうチョーサ捕鯨はやめよう、そのかわり日本近海で商業捕鯨を再開しようという記事が出ています。

日本の調査捕鯨の続行については、検討すべき時期だろう。残念ながら調査データに対する欧米の評価は低く、商業捕鯨の隠(かく)れ蓑(みの)と考えられて いる。また、捕獲した鯨肉は市場に持ち込まれるが、在庫が多いようだ。そろそろ調査捕鯨から撤退し、正々堂々と沿岸の商業捕鯨を再開すべき時期ではない か。国民が真に鯨肉を必要とするならば、国際批判にも耐えるだろう。ノルウェーは、国際捕鯨委員会に異議を申し立て、商業捕鯨を続けているのだ。むしろ商業捕鯨によって、クジラの需給を市場原理に任せれば、適正価格で鯨肉が売買されるとともに、調査捕鯨より捕獲数は減り、資源の保全につながる。沿岸捕鯨 は、日本の伝統である。南極海ではなく、地の利のある日本沿岸で、SSと戦うのである。

筆者は山田吉彦東海大教授です。まあ、いろいろ物議をかもす人物だそうで、引用した部分でも「地の利のある日本沿岸でSSと戦う」だとか、引用しなかったところも結構ハチャメチャです。アディ・ギル号と昭南丸の衝突を「自沈」と表現しているのは特にいただけません。
しかし、まあ、こういう人ですらもすでにチョーサ捕鯨は割にあわないと言っている、しかも掲載メディアが(愛国的な)産經新聞であることを考えると、チョーサを言い張るゲーケンや水産庁もこれから風当たりが強くなるのではないでしょうか。

Tuesday, January 18, 2011

ゴジラが出た/Harpoon fever

「ゴジラ」が出た。1月17日付けの朝日新聞です。
何事かと思えば16日に行われた大学入試センターの試験の日本史の問題で「ゴジラ」のポスターが出て、それに絡みで問題が出たということですね。まあ、それが受験生を悩ましたということでニュースになるのでしょうね。
南氷洋では別の「ゴジラ」が別の日本人を悩ませています。悩まされているのは日の丸「調査」捕鯨船団です(「調査」とかっこに入れるのはもちろん、こんなものは「調査」ではないという意味です。それが世界の常識です。捕鯨船団もその辺りを理解しているのか、船にはでっかくわざとらしく英語でRESEARCHと書いています)。
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ABCより転載)
南氷洋で暴れまわる「ゴジラ」は反捕鯨船団体、シーシェパードが昨年南氷洋で沈没した高速船アディ・ギル号に代わり、「妥協のない作戦」と呼ぶ今年の南氷洋反捕鯨戦線に投入した新鋭高速艦です。この船をローマ字式でgojiraと名付けたのは西オーストラリア州フリーマントルの市長のブラッド・ペティットです。シーシェパードの船団に加わるはじめてのオーストラリア船籍の船です。
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(サンローレル号に急迫するゴジラ。シーシェパードのサイトより転載)
このゴジラが12日午後、、南緯62度43分西経178度33分の地点で、補給/給油船のパナマ船籍、サンローレル号を捕捉、シーシェパードによれば、「日本の捕鯨団に給油するつもりか」と訪ねたところ「たぶん」という返事が返ってきたそうです。

この知らせにシーシェパードの旗艦スティーヴ・アーウィン号とボブ・バーカー号が現場に急行します。その2隻と追いつ追われつつしていた勇新丸2号と勇新丸3号がこれに続きます。
日本の捕鯨船団は本格的な「調査」捕鯨に入る前にシーシェパードに居所を探知されて、すべてが後手に回っている感がありますが、燃料補給船を抑えられてしまい、どんどん状況が厳しくなっています。
シーシェパードの発表によれば、今年のはじめに見つかって以来捕鯨船団はほとんど仕事になっていないのではないかということです。
14日付けのシーシェパードの発表によれば、サンローレル号は南緯60度以南の南極海にいたため、南極海での給油など、汚染の原因になりそうな活動を禁止する南極条約に違反するとゴジラの艦長から警告され、サンローレル号の艦長はそれに従い、北に移動しています。
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(サンローレル号を「護衛」するシーシェパードの船団。シーシェパードのサイトより転載)
それを監視する目的でスティーヴ・アーウィン号とボブ・バーカー号がサンローレル号に続いています。そしてそのあとを勇新丸2号と勇新丸と3号が追っています。シーシェパードによれば、12月4日に館山港を出港したとされるサンローレル号はまだまったく捕鯨船団に給油をしていないということです。兵糧断ちにすれば捕鯨はできなくなるという目論見で、シーシェパードはサンローレル号を徹底的に監視する作戦に入っています。もし、それでも燃料補給をしようとすれば、徹底的に間に入りの際、邪魔をする作戦でしょう。
かつてグリーンピースがゴムボートで燃料補給を阻止しようと間に入ろうとしたことがあります。その時、捕鯨船団は相手側が死んでもかまわないような危険なことまでやったんで、今回もしそのような事態になれば、犠牲者が出るかもしれません。
サンローレル号にシーシェパードが全力をそそいでいるおかげで、監視を逃れた勇新丸2号の銛でクジラがどんどん殺されていることは想像に難くありません。日新丸の巨大な船倉で解体作業が進んでいることで、シーシェパードのワトソン代表は歯ぎしりしているかもしれません。こういう事態になりかねないと、シーシェパードは、グリーンピースに同団体が保有する船の参加を呼びかけています。作戦や主義主張で違いがあるかもしれないが、もう一隻、船があれば、捕鯨船団を完璧に追いつめることができる、今年クジラを守るための最大のチャンスだ、小異を捨て大同につこう。自分たちと連絡を取り合う必要はない、南氷洋にその姿を表してくれるだけでいい。あと一隻、こちら側に船があれば、日本側の捕鯨を押さえ込むことができる。と呼びかけているのですが、グリーンピースからはこれまでのところ、なしのつぶて。まったく反応がありません。
もしかすると、サンローレル号はシーシェパードを日新丸から切り離すためのおとりであり、もう一隻、別な補給船が隠れている可能性もあります。「仕分け」を巧みに逃れ、予算がある鯨研だけにあり得ないことではないかもしれません。
シーシェパードの情報によると、15日には、補給船が追っ手を振り切ろうとするかのように嵐に突っ込んでいったそうです。タンカー、しかも積み荷でいっぱいのタンカーが荒い海へ突っ込んでいくってのは自殺行為というか、普通では考えられないことのようです。船体がぽきっと折れて重油がドブドブと海に流れてもへっちゃら、環境への配慮なんか二の次なのでしょうか。
南氷洋を無尽に駆ける「ゴジラ」、サンローレル号(と「護衛」のスティーヴ・アーウィン号とボブ・バーカー号、そしてその尻を追いかける勇新丸と3号)を離れ、現在は日新丸の探索に出撃しています。これからも捕鯨船団を悩ましそうです。まあ、あんまり暴れ過ぎると、去年のアディ・ギル号のように真っ二つにされちゃうかもしれないので、気をつけた方がいいかもしれません。